奇安信(QiAnXin)XLabとCNCERT(中国国家コンピュータ緊急対応チーム)の調査によれば、Dysphoriaの感染台数は世界で20万台を超え、ルーター、カメラ、ゲートウェイなどの組み込みLinux機器が標的となっています。
Dysphoriaの中核技術は、イーサリアムネームサービス(ENS) と ソラナネームサービス(SNS) をC2基盤として利用する点です。従来のDNSドメインは法執行機関に差し押さえられる可能性がありますが、ENSやSNSのブロックチェーン上に格納されたTXTレコードは、単一の管理者が制御できない分散台帳に記録されるため、差し押さえが事実上不可能です。
C2アドレスは、疑似IPv6アドレス(例:2001:db8:12e7:13d7::1)に埋め込まれてENS/SNSのTXTレコードに格納されます。マルウェアはその文字列から4バイトの鍵だけを取り出し、独自の変換関数F() を実行して本来のIPv4アドレスを復元します[Primary XLab report]。
復号には、2回のKSA(鍵スケジュールアルゴリズム)ラウンドを備えた大幅に改造されたRC4暗号が使われます。標準的なRC4に加え、LCG(線形合同法)ベースのS-box再シャッフルが追加され、PRGA(擬似乱数生成アルゴリズム)にはLFSR(線形帰還シフトレジスタ)ステップと複雑なビットローテーションが組み込まれています。XLabは、Pythonで再現可能な完全な変換アルゴリズムを公開しています[Primary XLab report]。
DDoSサンプルはまず、ENS/SNSドメイン(例:burrberry.eth)にクエリを送信し、リレーノードのIPアドレスのブロックを取得します。次に、そのリレーノードに対してGET /nodes?key=meowmeowmeowリクエストを送信し、最終的なC2アドレスリストを入手します。このC2アドレスリスト自体も、他の感染デバイスがリレーノードとして構成されているため、攻撃指令は被害者端末のネットワークを通じて流れることになります[Primary XLab report]。
Dysphoriaはわずか3か月の間に頻繁なアップデートを繰り返しています[Primary XLab report]:
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 3月25日 | 最初のJackSkid変種を確認。ENSドメイン m3rnbvs5d.eth を使用 |
| 4月1日 | fbot変種が出現("hail china mainland"出力) |
| 4月29日~30日 | 新しいRC4暗号化とENSドメイン ukranianhorseriding.eth を導入 |
| 5月上旬 | SNSドメイン 24carnforth2merseyside.sol を追加(マルチチェーンC2) |
| 6月25日 | DDoS機能を完全に排除した純リレーバリアントが出現。感染デバイスはプロキシノードとしてのみ機能 |
| 6月27日~28日 | UPnPによる自動ポートフォワーディングを追加。ハイブリッドアーキテクチャが完成 |
Dysphoriaの主な感染経路は、TelnetとSSHのパスワード総当たり攻撃です。これに加えて、ルーター、カメラ、組み込みLinux機器を標的とした14件以上の既知のリモートコード実行(RCE)脆弱性を悪用します[Primary XLab report]。悪用されるCVEには、長年にわたって知られるIoTの欠陥(CVE-2017-17215、CVE-2020-8515)から、最近公開された脆弱性(CVE-2025-9528、CVE-2025-28137、CVE-2025-34152、CVE-2025-55182)までが含まれており、ボットネットが積極的にメンテナンスされていることがわかります[Primary XLab report]。
3つの相互に連携した設計上の選択が、従来のボットネット封鎖の常套手段を無効化しています:
XLabとCNCERTの結論は明確です。この組み合わせにより、単一のIPアドレスやドメインの封鎖は無意味となります。C2層は暗号化により隠蔽され、名前レコードは不変のブロックチェーン上に存在し、指令経路は数十万台の手のつけられない家庭用ルーターを通じて循環するためです[Primary XLab report]。