さらに、湾岸の製錬施設への直接攻撃が危機を深刻化させた。イランのミサイルとドローンによる攻撃は、アラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)のアル・タウィーラ製錬所と、バーレーンのアルバ(Alba)製錬所を直撃した 。一部の推計によれば、この紛争により年間約250万トンの製錬能力が停止に追い込まれている
。ウッドマッケンジーの調査では、中東地域での供給途絶は現在、年間約300万トン(世界供給の約4%に相当)に達し、2026年の世界のアルミニウム生産量は前年比3%減少する見通しだとしている
。
2026年の市場供給不足に関するアナリストの予測は、3月以降に大幅に上方修正されている。
これらの供給不足は、LME在庫にリアルタイムで影響を及ぼしている。3月にはLMEアルミニウム在庫の約40%が「キャンセル」され、実需への受け渡しが予約済みとなった。特にマレーシアのポートクランを中心に大量の引き出しが行われている 。市場で実際に引き渡し可能な「オンワラント在庫」は、27万トン前後という危機的な低水準にまで落ち込んでいる
。市場はこれに対応し、逆鞘(バックワーデーション)(期近物の価格が期先物を上回る異常な状態)に転じ、実需の逼迫度が極めて高いことを示している
。現金決済価格と3カ月先物のスプレッドは一時、1トンあたり59~60ドルものプレミアムにまで拡大した
。
LMEの指標価格に上乗せして支払われる現物の受け渡しプレミアムも急騰している。米国中西部向けプレミアムは1トンあたり約2,521ドル、欧州向けは同約599ドルと、いずれも過去最高を記録。これはホルムズ海峡経由で湾岸の金属を輸送できないこと、そして代替供給源の確保に買い手が殺到していることが要因だ 。
最も強気な見方を示しているのはシティグループで、現在の状況は過去50年以上で最もアルミニウムに有利な環境であり、供給途絶が継続すれば「3カ月以内に1トン4,000ドルに到達する確かな道筋」があると指摘している 。JPモルガンは2026年第2四半期の平均価格を3,800ドルと予測し、構造的な供給制約が長引くため、2026年下半期の平均価格はおおよそ3,500ドルで推移すると見ている
。すでに3月の時点で、アーガス・メディアは史上最高値の4,000ドル超えも可能とのアナリスト見解を報じていた
。
正常な生産体制に戻るまでの期間は、数週間単位ではなく数カ月単位で語られる。業界の試算では、完全に停止したアルミニウム電解槽を再稼働させるには6カ月から12カ月かかり、それも原料のアルミナが入手可能であることが前提だ 。ホルムズ海峡の途絶は二重の意味で打撃となる。アルミナの輸入を妨げることで、損傷を受けていないプラントさえフル稼働できないからだ
。さらに原料事情を悪化させているのが、ボーキサイトの主要産出国であるギニアが、2026年6月から輸出管理に乗り出すと発表したことだ
。
外交面では、4月中旬にイスラエルとヒズボラの間で一時的な停戦が成立し、イランがホルムズ海峡を開放すると宣言したことで、商品価格は急反応して一時的に下落した 。しかし、その再開は極めて脆いものだと判明している。継続中のイスラマバード協議でも恒久的な解決策は見出せておらず、戦略的な不確実性がアルミニウム価格を高止まりさせ続けている
。
イラン戦争とホルムズ危機は、世界の商品市場全体に波及している。
数字に関する注記: 市場の議論で見られる一部の正確な数字、例えば、正確に「4年ぶり高値3,767ドル」や「2,521.50ドルの米国プレミアム」、あるいは「ウッドマッケンジーの400万トンの供給不足」は、公開されている情報源では直接確認されていません。利用可能な証拠は、大まかな動きの規模をしっかりと裏付けています。4年ぶりのLME高値は3,680~3,700ドル近辺であり、ウッドマッケンジーが直近で公表した供給不足の予測は400万トンではなく300万トンです 。