Appleは、アプリ追跡の同意取得機能「App Tracking Transparency(ATT)」の実装を巡り、英国で約20億ポンド(約27億ドル)の集団訴訟を提起された。争点は、利用者がプライバシーを管理できるべきかどうかではない。外部のアプリ開発者とApple自身のサービスに、同じ競争条件が適用されていたかだ。現時点でこれは原告側の請求であり、Appleの違法行為が認定されたわけではない。
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訴訟の概要:誰が、何を主張しているのか
訴訟は2026年9月3日、ATT Collective Action Limitedが英国の数千社に及ぶアプリ開発者を代表して、ロンドンの競争上訴審判所(Competition Appeal Tribunal、CAT)に提起した。同団体のディレクターは、英競争・市場庁(CMA)で反トラスト部門のシニアディレクターを務めたアン・ポープ氏で、原告団は法律事務所Hausfeldが代理している。
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ATTは、アプリが他社のアプリやウェブサイトをまたいで利用者の行動を追跡し、広告目的で使う場合に、Appleが管理する許可画面を表示することを求める仕組みだ。原告側は、外部開発者にはより厳格、または追加的な同意要件を課したのに対し、Appleの自社サービスにはより軽い仕組みを適用したと主張する。
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この差により、第三者の開発者は広告データの収集・利用が難しくなり、広告収益に依存する事業の収益性や利用者獲得コストに悪影響が出た、と原告側はいう。その結果、Appleの広告事業が不当な競争上の優位を得たというのが請求の骨子である。これらはあくまで原告側の主張であり、Appleは争うことができ、審判所もまだ判断を示していない。
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「二重同意」がなぜ問題になるのか
競争法上の焦点は、ATTが追跡を制限すること自体ではない。iOSの運営者であるAppleが、外部のアプリ提供者に対して追加のApple設計の許可プロセスを求めながら、自社サービスには異なる扱いをしていたかどうかにある。
ATTは、iPhone・iPad上のアプリ提供者が、異なるアプリや企業をまたぐデータを広告目的で利用する際の条件を定める。ドイツ連邦カルテル庁は、外部事業者は特定の広告データにアクセスするため追加同意を取得する必要があった一方、厳格な要件はApple自身には適用されていなかったと説明している。
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利用者が許可を拒否すれば、アプリ側はターゲティング広告に用いるデータへのアクセスを制限され得る。英国の訴訟は、プライバシー保護という目的そのものではなく、同意画面の設計と適用の非対称性が競争上の損害を生んだと主張している。
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Appleの反論:利用者に明確な選択肢を与える機能
AppleはATTについて、アプリがアプリやウェブサイトをまたいで利用者を追跡することを許可するかどうか、消費者が明確に選べるようにするプライバシー機能だと説明している。
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またAppleは、この枠組みは競争法に適合しているとの立場を維持している。ドイツでは同意画面の文言と書式を変更することに同意したが、既存のATT画面は明確で理解しやすく、利用者が自らのデータを管理するうえで有効だとの見解を示した。
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つまり本件では、原告側が「差別的な実装だった」と主張し、Appleが「正当なプライバシー保護策だ」と反論する構図になる。
ドイツの対応が示すもの
英国での訴訟に先立ち、ドイツではATTを巡る大きな競争法上の手続きが進められていた。ドイツ連邦カルテル庁は2026年8月、Appleが提示した確約を拘束力あるものとし、調査を終了した。同庁は、Apple自身のサービスと外部アプリとで同意要請の設計が異なっていた点に異議を唱えていた。
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同庁は、Appleのルールが自社サービスを優遇し、他社の事業を妨げる可能性があるかを調べたとしている。一方で、Appleが自社ルールは競争法に適合すると考えていることも記録している。
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このドイツでの結論が、英国の損害賠償請求の勝敗を決めるわけではない。ただし、同意の仕組みがAppleと外部開発者を競争上公正に扱っていたかという、密接に関連する論点を扱っている点で重要な背景となる。
欧州各国で続くATTへの視線
ATTはドイツ以外の競争当局からも注目されてきた。フランスの競争当局は2025年3月、ATTの実装はAppleが掲げるデータ保護の目的に照らして必要かつ均衡の取れたものではなく、第三者のアプリ提供者に不利益を与えたとして、Appleに1億5,000万ユーロの制裁金を科した。Appleはこの決定に遺憾の意を示した。
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イタリア、ポーランド、ルーマニアでも、ATTに関する競争上の精査や調査が確認されている。
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52 これらの動きが浮き彫りにするのは、利用者に利益をもたらすプライバシー機能であっても、プラットフォームが自社と他社に不均等に適用すれば、競争上の問題になり得るという点だ。
今後の焦点
英国の集団訴訟は開発者が被ったとされる損害への賠償を求めるものだが、まだ初期段階にある。CATは、損害賠償が認められる前に、請求の法的根拠と証拠を検討する必要がある。
最大の論点は、AppleのATT実装が外部アプリ提供者に不釣り合いな負担を課す一方、自社の広告エコシステムに優位を残したのかどうかである。Appleのプライバシー保護という正当化、同意画面の設計差、そして開発者への経済的影響が、審理の中心となる。
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