「crypto summer」への回帰を示唆するケンドリック氏
ビットコインの急反発を受け、スタンダード・チャータードでデジタル資産調査を統括するジェフ・ケンドリック氏のトーンは、慎重姿勢から明確な強気へと変わりました。同氏はビットコインについて「潮目が変わった」と述べ、再び「crypto summer(暗号資産の夏)」に向かう可能性を示唆しています。年末10万ドル、2030年50万ドルという見通しも維持しました。
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ただし、これはビットコインが一直線に上昇するという意味ではありません。7万7,000~8万ドルに近づくまでの値動きは非常に速く、上昇のかなりの部分が、相場の下落に賭けていたトレーダーによる強制的な買い戻しで膨らんだ可能性があります。長期的な強気論と、目先の取引環境は分けて考える必要があります。
長期目標は強気、短期的には慎重
ケンドリック氏の基本的な見方は、今回の反発が単なる一時的な戻りではなく、市場の方向転換を示している可能性があるというものです。スタンダード・チャータードが長期目標の達成時期を2年後ろ倒しした後も、2030年のビットコイン価格を50万ドルとする目標は維持されています。
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2026年末の基本シナリオは10万ドルです。さらに同氏は、回復が過去最高値に向けて加速すれば、今回初めて、この年末予想が低すぎる結果になるリスクもあると述べています。
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もっとも、これらは保証ではなく予測です。直近の上昇局面で報告された約7万7,000ドルから年末10万ドルに到達するには、ビットコインがなお大幅に上昇する必要があります。一方、2030年50万ドルという数字は、数年単位の普及・採用拡大を前提とした長期シナリオであり、短期の価格目標ではありません。
ビットコインを押し上げた4つの要因
ビットコインは週初の約6万2,800ドルから、週末には約7万6,944ドルまで上昇しました。週間上昇率は約22%に達し、3年以上ぶりの大きな週間上昇となりました。
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今回の上昇では、複数の材料が同じ方向に働きました。
- 米国債利回りの低下: 債券利回りが低下したことで、リスク資産を取り巻く環境が改善し、反発を支えました。
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- 米国の暗号資産政策への期待: CLARITY Actの成立を前進させようとする動きが、規制環境への楽観を強めました。
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- 現物ビットコインETFへの資金流入回復: 米国の現物ビットコインETFへの流入が戻ったことも、買い材料として挙げられています。
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- 市場ポジションの急変: ビットコインの下落を見込んでいたトレーダーが、価格上昇に伴いポジションを買い戻しました。
つまり、今回の上昇は単一のニュースだけで説明できるものではありません。マクロ環境、政策期待、機関投資家が利用しやすい投資商品、そしてデリバティブ市場のポジションが、同時に追い風となりました。
ショートスクイーズが上昇を増幅
報道によると、Coinglassのデータを基にした集計では、反発局面の約1時間で10億ドルを超えるビットコインのショートポジションが清算されました。暗号資産市場全体では、弱気ポジション約27億ドルが失われ、2021年以降の記録で最大規模のショート清算の波とされています。
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ショート清算は、価格上昇をさらに加速させる循環を生みます。価格が上がると、レバレッジを使って売っていた投資家は損失拡大を防ぐため、ポジションを閉じる必要があります。その際にビットコインを買い戻すため、価格がさらに上昇し、追加の清算と買いが発生します。
ただし、この仕組みの効果は一時的です。大量のショートが清算されれば、強制的な買い戻しという上昇燃料は減少します。その後も上昇を続けるには、新たな現物需要や新規資金の流入が、ショートスクイーズに代わる必要があります。
2023年3月の反転局面との共通点は「速さ」
今回の相場は、シリコンバレー銀行の経営破綻をきっかけにリスク心理が急反転した2023年3月の上昇局面と比較されています。ただし、共通しているのは主に反発の速さと、投資家心理が急速に改善した点です。2026年2月のビットコインも、2023年3月以来最大の日中上昇を記録したと報じられています。
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この比較は相場の勢いを理解するうえで参考になりますが、両者のマクロ経済環境が同じだと証明するものではありません。急反発はトレンドの転換を示すこともあれば、一時的なポジション調整にすぎないこともあります。ショート清算の勢いが収まった後も、新たな価格帯を維持できるかどうかが見極めのポイントになります。
50万ドルの根拠は機関投資家とトークン化
ケンドリック氏の長期的な強気論の中心にあるのは、機関投資家の参加拡大です。スタンダード・チャータードは、上場デジタル資産への機関投資家の関心が急速に高まったことを受け、暗号資産の専門調査を開始しました。同チームを率いるのがケンドリック氏です。
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同氏の議論は、ビットコインを直接購入する投資家の増加だけに依存していません。スタンダード・チャータードの後続のデジタル資産調査では、ビットコインの見通しを、トークン化された資産やブロックチェーンを基盤とする金融インフラの成長とも結び付けています。同調査では、2030年末のビットコインを50万ドル、イーサリアムを4万ドルとしています。
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米国の現物ビットコインETFも、こうした機関投資家向けの経路の一部です。重要なのは、特定の日にどれだけ資金を集めたかだけではありません。規制された投資商品によって、従来型の投資家がビットコインにアクセスしやすくなれば、時間をかけて保有者層が広がる可能性があります。ケンドリック氏の長期シナリオは、今回の上昇が終わった後も採用拡大が続くことを前提としています。
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最大の注意点は「上がりすぎ・速すぎ」
強気シナリオに対する最も分かりやすい反論は、ビットコインが短期間に上がりすぎたことです。あるテクニカル分析では、日足RSIが84.45に達し、価格が日足のボリンジャーバンド上限を上回ったとされています。これらは強いモメンタムを示す一方、平均回帰による急な反落の可能性も意識される水準です。
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もちろん、これだけで天井が確定したわけではありません。強い上昇トレンドでは、買われすぎを示す指標が高水準にとどまることがあります。モメンタム指標だけで上昇継続の可否を判断することもできません。ただ、持続的な上昇に移る前に、値動きの荒い調整が入る可能性を示す材料にはなります。
より慎重な見方では、短期的な上値抵抗を8万5,000~9万ドル付近とする予想や、年末のビットコイン価格を7万5,000ドル前後と見るシナリオもあります。これらは次の取引サイクルに関する予想であり、ケンドリック氏の2030年の長期見通しを直接否定するものではありません。むしろ、「crypto summer」という表現が示すほど、毎週滑らかに上昇する相場ではない可能性を示しています。
投資家が見るべき3つの時間軸
ケンドリック氏の見通しは、次の3層に整理できます。
- 短期: ビットコインはさらに上値を試す可能性がありますが、ショートスクイーズと過熱したモメンタム指標を背景に、反落しやすい局面でもあります。
- 年末: スタンダード・チャータードの基本予想は10万ドルです。ただし、回復が加速すれば、この目標が低すぎる可能性も同氏は認めています。
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- 長期: 2030年50万ドルの目標は維持されています。その実現には、機関投資家の採用、ETFを通じたアクセス、金融資産のトークン化が進むことが必要です。
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要するに、「crypto summer」はビットコインが新たな相場局面に入る可能性を表す言葉であって、毎週上昇するという約束ではありません。目先の焦点は、反発の初動を支えた強制的な買い戻しが一巡した後も、現物市場と機関投資家からの実需が続くかどうかです。
なお、スタンダード・チャータードとHSBCが、SWIFTのブロックチェーン台帳上で17行・6大陸を巻き込む初のライブ越境トークン化預金取引を完了したという主張については、今回確認できた資料だけでは十分な裏付けがありません。一次資料による確認がない限り、ケンドリック氏の長期見通しを支える確定的な事実として扱うべきではありません。