プロジェクト名の「Musubi(結び)」は、日本語で「つなぐ」「結びつける」という意味。この名称には、日韓の経済を結び、さらにはアジア全体の貿易回廊へと拡大していく壮大な構想が込められています。
日韓間の年間貿易額は約750億ドル。ところが、現在の国際送金は大半が米ドルを中介通貨とする「コルレス銀行方式」で行われており、決済に1~2日かかり、為替手数料も高額です。プロジェクトMusubiは、この非効率な構造にメスを入れます。
目標は、日韓間の取引を円建てかウォン建てで直接、即時、かつ低コストで決済できるようにすること。米ドルを中介から外すことで、為替リスクとコストを劇的に削減しようというのです。
Canton Networkは、機関投資家向けに設計された「パブリック・パーミッションド・ブロックチェーン」です。特筆すべきは、ネイティブのステーブルコインを持たない点。代わりに、各金融機関が自らのトークン化された資金(ステーブルコインやトークン化預金)を持ち寄って利用します。
プロジェクトMusubiにおけるPvP(Payment vs Payment)決済の流れは、以下の通りです。
| プレイヤー | 役割 |
|---|---|
| SBI Digital Practice (SBIDP) | SBIグループのCanton Network子会社。プロジェクト設計、既存金融システムとの統合レイヤー開発、日本初の信託銀行裏付け円建てステーブルコイン「JPYSC」の提供、日本の機関銀行・規制当局との関係構築を担当。 |
| Nodeinfra | 韓国のブロックチェーンソフトウェア企業で、既にCanton Networkのバリデータとして実績あり。韓国の規制に関する専門知識、ウォン建てステーブルコイン統合の技術基盤、Canton上でのバリデータノード運用を提供。 |
| Canton Network (基盤技術) | Damlスマートコントラクト上に構築されたパブリック・パーミッションドL1ブロックチェーン。原子PvP/DvP決済、機関投資家向けプライバシー、クロスアプリケーション構成可能性を提供。エコシステムにはUSDCx(2025年12月導入)やClearToken(2026年3月稼働)なども含まれる。 |
両社は、本プロジェクトの成功後、日韓以外のアジアの貿易回廊へも展開する意向です。
日本は、2026年6月1日に全面施行された改正**資金決済法(PSA)において、法定通貨連動型のステーブルコインを「電子決済手段(EPI)」**として明確に定義。発行主体は銀行、信託会社、登録資金移動業者に限定され、JPYSCはこの枠組みの下で正式に運用されています。
しかし、越境取引では、外国で発行されたEPI(例えば韓国のウォン建てステーブルコイン)を日本国内で取り扱う場合、**電子決済手段取引業者(EPIESP)**の登録が必要となり、顧客資産の分別管理や厳格な準備金ルールが課されます。加えて、2026年7月15日に国会を通過した暗号資産の移管法案(FIEAへの移管)も、今後の政省令の整備(~2027年度)が完了するまで、制度上の過渡的な不確実性をもたらしています。
韓国では、日本とは異なり、ステーブルコインに特化した法制度はまだ存在しません。政府は現在、法制化を急ピッチで進めています。
結論: 日本は運用可能な制度を持つ一方、韓国はそれを急ピッチで構築中。プロジェクトMusubiは、JPYSCと米ドル建てステーブルコイン(USDCx等)では直ちに開始可能ですが、ウォン建て決済を本格化するにはDABAの成立が不可欠です。
プロジェクトMusubiは、世界的に加速する機関投資家向けステーブルコイン・イニシアティブの一環としても注目されます。
プロジェクトMusubiが特に際立つのは、民間セクター主導で、実際の経済貿易回廊に直接狙いを定め、意図的に米ドルを中介から外すという地政学的な戦略性を内包している点です。これは、アジアにおける為替効率化と国際金融のあり方に、大きな一石を投じる可能性を秘めています。