Percepticを創業したのは、ティルマン・フロック(CEO)、マーティン・コープス、ザキ・トラシュの3名だ 。彼らは、データ分析の巨人パランティア・テクノロジーズにおいて、中核製品である「人工知能プラットフォーム(AIP)」の設計・開発を主導し、ライフサイエンス(生命科学)部門を一から構築した中心メンバーである 。厳しい規制下にある大企業の現場で、実用的なAIシステムを導入してきた経験が、Percepticの製品思想の根幹を成している。同社は現在、ロンドン(本社)とスイス・バーゼルにオフィスを構え、約20名の体制で事業を展開している 。
今回の資金調達ラウンドを主導したのは、欧州を代表するベンチャーキャピタルであるAccelだ。これにAir Street CapitalとElder Gullが参加した 。評価額は非公開 。Accelのパートナー、ソナリ・デ・ライカー氏は、投資を決めた理由として、Percepticのプラットフォームが創薬の一部工程だけでなく、ライフサイクル全体をカバーできる点と、公の発表前にすでに試験運用を超えた有償の本番導入を実現していた点を挙げている 。
Percepticのプラットフォームは、企業が現在使用している既存のデータやツール、ワークフローの上位に位置する「インテリジェンスレイヤー」だと説明される。これにより、サイロ化した各部門をつなぎ、企業に大規模なインフラ刷新を強いることなく統合を実現する 。特定のインフラやAIモデルに依存しない設計で、顧客は自社のデータやコンピューティング資源、AIモデルを自由に持ち込むことができる 。システムは、以下の3つの製品で構成されている。
導入候補や競合プログラムなど、社外の医薬品資産を探索・評価するためのモジュール。Percepticによれば、数週間かかっていた科学的デューデリジェンス(精査)を約1時間に短縮し、資産スクリーニングの規模を週数百件から数分で数千件に拡大するという 。
科学的仮説の検証や、社内データと外部ベンチマークの比較、治験の適応症選択などを支援する「仮説検証と意思決定」のレイヤー。部門横断的なデータの可視性を高め、開発のGo/No-Go判断を加速させる 。
社内外に散在する治験データを統合・調和させるデータ基盤。すでに稼働している環境では、臨床データの抽出作業が50倍に増加したとのことだ。これは、手作業によるデータ処理が大幅に自動化されたことを示す具体的な成果である 。
シードステージのスタートアップとしては異例だが、Percepticは正式発表の時点で、すでに世界の売上高トップ20に入る複数の製薬企業で有償の本番導入を実現している 。公表されている顧客は、オーストラリアに本社を置く世界的バイオテクノロジー企業CSLである 。
同社の中核的な売りは、プラットフォームが「部署ではなく、医薬品そのものに寄り添う」ことだ。これは、創薬化学者向け、臨床開発向け、事業開発向けといった個別最適化されたツールが乱立する現在の製薬R&Dの状況に対する、明確なアンチテーゼである 。これは、創業者たちがPalantirで学んだ教訓に直結している。規制業界におけるAIは、孤立したワークフローに後付けで接続するだけでは機能せず、組織の意思決定の「結合組織」として深く組み込まれなければならない、という確信である 。