2026年初頭、AI企業Anthropicは Claude Mythos Preview と呼ばれるモデルを公開しました。これは、ソフトウェアの脆弱性を見つけ、重要なデジタルインフラを守る目的で開発されたAIです。
ただし、このモデルは一般公開されず、Project Glasswing という枠組みのもと、限られた企業や組織にのみアクセスが提供されました。理由は、悪用された場合のリスクが大きいためです。
テストでは、このモデルが次のような能力を示したと報告されています。
研究では、Mythosが大規模ソフトウェア環境から数千件の脆弱性を発見したとされ、AIが脆弱性発見のスピードと規模を大きく変える可能性を示しました。
金融機関や規制当局にとっての問題は明確です。防御側がAIを使えるなら、攻撃者もいずれ同じことをするという点です。
Claude Mythosへのアクセスは厳しく制限されており、当初は重要なソフトウェアインフラを守る一部の組織に限定されました。
その結果、欧州の金融機関や規制当局では懸念が高まりました。
特に欧州の銀行は、長年にわたって積み重なったITシステムを抱えるケースが多く、AIがそれらの隠れた欠陥を見つけてしまう可能性が指摘されています。
こうした状況を受け、Mistral AIは銀行向けに特化したサイバーセキュリティAIモデルの開発を進めていると報じられています。
このモデルは一般的なAIではなく、防御用途に特化したツールとして設計されると見られています。
銀行との議論では、次のような用途が想定されています。
イメージとしては、AIによる自動セキュリティ研究者が常時システムを監視し、攻撃者より先に弱点を見つけるような仕組みです。
サイバーセキュリティ業界では、AIによってバグ発見の経済構造が変わりつつあると言われています。
従来の脆弱性発見は、専門のセキュリティ研究者がコードを手作業で分析する方法が主流でした。
しかし高度なAIモデルは、次のような作業を自動化できます。
AIが「機械の速度」で動く場合、脆弱性の発見から実際の攻撃までの時間が大幅に短縮される可能性があります。
もしこうしたAIが適切に運用されれば、銀行にはいくつかの防御上の利点があります。
継続的な脆弱性スキャン
定期監査ではなく、AIがコードやインフラ設定を常時チェックできるようになります。
修正優先度の自動判断
すべての脆弱性が同じリスクとは限りません。AIは実際に悪用される可能性と影響度を基準に順位付けできます。
ゼロデイの早期発見
攻撃者より先に未知の脆弱性を見つけ、パッチを適用できる可能性があります。
自動セキュリティテスト
AIが概念実証のエクスプロイトを作成し、本当に攻撃可能かどうかを検証できます。
欧州でこのようなモデル開発が進む背景には、**AI技術の主権(テクノロジー主権)**というテーマもあります。
高度なAIモデルへのアクセスは、単なるITツールではなく、国家安全保障や経済戦略とも関わる問題になりつつあります。各国政府や金融機関は、AIを使ったサイバー攻撃に対抗するため、先端モデルへのアクセスを求めています。
その意味で、Mistralのモデルは単なる企業向け製品ではなく、欧州が独自のサイバー防御能力を構築する試みと見ることもできます。
このプロジェクトについては、まだ多くの詳細が公開されていません。
現時点で不明な主な点は次の通りです。
また専門家は、AIが強力なツールになったとしても、サイバーセキュリティの基本は変わらないと指摘しています。
安全なソフトウェア開発、パッチ管理、レッドチーム演習、運用セキュリティといった従来の対策は依然として重要です。
ただし確実に変わりつつあるのは、脅威の規模とスピードです。AI時代では、攻撃者に追いつくためにも防御側がAIを使う必要があるという認識が広がりつつあります。