Mendoの哲学は明確だ。実際に使ってみなければテクノロジーを理解できないこと、その体験は日々のワークフローにシームレスに溶け込むこと、そして短期的なログイン数ではなく中長期的な組織へのインパクトを重視すること。つまり、「AIを使う文化」を組織に根付かせることこそが、同社のビジネスの核心だ 。
Mendoのアプローチはすでに市場から高い評価を得ている。現在、**PwC(プライスウォーターハウスクーパース)、Novo Nordisk(ノボ ノルディスク)、Crédit Agricole(クレディ・アグリコル)**を含む100以上の主要企業にサービスを提供し、プラットフォーム上で10万人以上の社員が日々AIの活用スキルを磨いている 。
Excel向けの「脱・自己流」トレーニングツールとしてスタートしたMendoは、今やMicrosoft 365やChatGPT、Gemini、Claudeなど、企業現場で使われるあらゆる主要生成AIツールに対応。フランス国内での強固な地盤を築いた上で、そのモデルを欧州全域で検証しようとしている。
フランスでは、大規模言語モデルを開発するMistral AIなどに代表されるように、AIスタートアップへの巨額投資が相次いでいる 。しかし、Mistralらが「頭脳」に当たる基盤モデルを開発するプレイヤーなら、Mendoはそのテクノロジーを現場に浸透させる「神経」、あるいは「血流」とも言えるポジションを狙う。
CEOのQuentin AmaudryとCTOのAlexandre Pinonが創業した同社は、どんなに高性能なAIモデルであっても、現場の社員が使いこなせなければビジネス成果(売上向上や業務効率化)には直結しないという極めて実務的な課題に焦点を当てた。この「人」のレイヤーこそ、AI先進国となったフランス発のユニークなソリューションと言えるだろう。
今回の資金調達でMendoが掲げる成長戦略は、単なる人材増強ではない。特に注目すべきは「エージェンティックAI(Agentic AI)」への対応だ 。これは自律的にタスクを実行するAIエージェントを指し、今後の企業AI活用の主戦場になると見られている。Mendoは、単に人間がチャットでAIと対話する段階から、人間に代わって複雑なワークフローを実行するAIを「どう正しく導入・管理するか」という次世代の課題に先手を打つ構えだ。
投資家からの信頼も厚い。Ventechのパートナーは今回の出資について「AIのROI(投資対効果)を最大化するための最も重要なピースはテクノロジーではなく、人とプロセスの変革だ」とコメントしており、Mendoの市場ポテンシャルの大きさを裏付けている。
約19億円の新たな資金を得たMendoは、欧州企業のAI活用にまつわる「絵に描いた餅」を、具体的な利益に変えるキープレイヤーとして、その存在感を急速に高めていきそうだ。
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