ある報道では、KSロジスティカの2025年の売上高を160万ルーブルとしています。第三者の利益を代表しているとの見方も含め、これらは報道された情報であり、申請の目的や背後関係を証明するものではありません。
もっとも、これはあくまで申請者側が示した理由です。ロシア政府がその主張を受け入れたことや、ネスレが法令・規制に違反したと認定したことを示す情報はありません。
ネスレはロシア国内で事業を続けており、報道では6カ所の製造拠点があるとされています。 そのため、ネスレがロシア市場から完全に撤退したという申請側の描写とは、実際の事業状況に隔たりがあります。一方で、輸出の縮小や事業規模の抑制が報じられていることも事実です。
今回の申請が注目される理由は、ロシアがすでに欧米企業のロシア事業に対して同様の仕組みを使っているためです。
法的な枠組みは、2023年4月25日に署名された大統領令第302号で整備されました。この制度は、ロシアが「非友好国」と位置づける国と関係する投資家が所有・管理する一定の資産について、国家安全保障上の脅威や対抗措置などの事情がある場合に、ロシア当局が管理できるようにするものです。
ロシア政府は2023年7月、この仕組みを使ってフランスの食品大手ダノンのロシア事業と、デンマークのビール大手カールスバーグが保有していたバルチカの持ち分を、国有財産管理庁(ロシムシチェストボ)の管理下に置きました。
「一時的な管理」という名称でも、外国企業が通常どおり日常の経営を続けられることを意味するわけではありません。ダノンとカールスバーグのケースでは、対象事業の実質的な管理権が国家側に移り、その後の恒久的な所有権変更や売却につながるリスクが広く指摘されました。
カールスバーグの例では、ロシア資産が2024年12月に国家管理対象のリストから外されました。 これはネスレの今後を示すものではありませんが、「一時的な管理」が固定的な状態ではなく、所有権をめぐるより大きなプロセスの一部になり得ることを示しています。
一方、次の事項を確認した情報はありません。
したがって、今回の申請は「ネスレのロシア資産がすでに国有化された」という話ではありません。現段階では、ネスレにとってロシア事業の経営権や所有権が変わる可能性を開く動きと位置づけるのが適切です。
今後の焦点は、パトルシェフ副首相の事務局が措置を推奨するか、プーチン大統領が大統領令を出すか、ロシムシチェストボが管理者として指定されるか、そしてその後に売却や所有権移転が提案されるかどうかです。