レントセルチブ(rentosertib、別名ISM001-055/INS018_055)が、特発性肺線維症(IPF)の重要な第III相試験に進んだ。Insilico Medicineは、標的の探索と低分子化合物の設計の双方で生成AIを活用した候補薬として、初めてこの段階に到達したものだと位置付けている。
ただし、これは開発上の大きな節目であって、有効性の確立や承認を意味するものではない。患者に臨床的な利益を示せるかどうかは、これから進む第III相試験の結果で判断される。
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GENESIS-IPF-3で最初の患者に投与
Insilico Medicineは2026年9月、北京協和医院(Peking Union Medical College Hospital)でGENESIS-IPF-3試験の最初の患者の組み入れと投与を完了したと発表した。同日には上海市肺科医院も最初の患者を組み入れた。試験登録番号はNCT07687459およびCTR20262475である。
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GENESIS-IPF-3は、中国で実施される前向き、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較の第III相試験だ。中国の47施設で成人IPF患者320人を組み入れ、52週間追跡する計画となっている。主要な有効性評価項目は、努力性肺活量(FVC)の年間低下率である。
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FVCは、息を最大限吸い込んだ後に強く吐き出せる空気の量を測る肺機能指標で、IPFの臨床試験では標準的に用いられる。今回の試験が重要なのは、短期間・少人数の初期シグナルが、1年にわたる盲検下の比較でも再現されるか、安全性が許容できるかを検証する設計だからだ。
標的TNIKと、AIが担った役割
レントセルチブは、TNIK(TRAF2- and NCK-interacting kinase)を阻害する経口低分子薬である。2024年のNature Biotechnology掲載論文では、Insilicoの生成AIワークフローが、TNIK阻害を抗線維化の戦略候補として見いだし、INS018_055の開発を支援したことが報告された。同論文では、マウスおよびラットの複数の線維症モデルで選択的な抗線維化活性が示され、第I相試験での安全性・忍容性データも報告されている。
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ここで区別しておくべきなのは、AIが標的候補の優先順位付けや化合物設計・最適化を支援できても、薬になるかどうかを決めるのは最終的に実験、製造、毒性評価、そして人での臨床試験だという点である。レントセルチブの価値を決めるのは「AIで設計された」という経緯ではなく、第III相試験で臨床的有用性を示せるかどうかである。
第IIa相で得られたFVCのシグナル
無作為化第IIa相試験の投与期間は12週間だった。60mgを1日1回投与した群では、ベースラインからのFVC平均変化は**+98.4mLだったのに対し、プラセボ群では-20.3mL**だった。60mg・1日1回群は18人、プラセボ群は17人で構成された。
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第III相へ進む根拠となるデータではあるが、解釈には慎重さが必要だ。
- 投与・評価期間は1年ではなく12週間と短い。
- 各用量群の参加者数は少ない。
- この期間の平均FVC差だけでは、効果の持続性、生存への影響、既存治療との優劣は示せない。
第IIa相の論文は、この試験を安全性と有効性を評価する無作為化プラセボ対照試験として報告している。第III相では、肺機能に関する初期の所見をより厳格な条件で検証することになる。
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試験を主導する研究者
GENESIS-IPF-3の主任研究責任者は、中国医学科学院・北京協和医院の徐作軍教授である。Insilicoは、中国工程院の鐘南山アカデミー会員と、上海市肺科医院院長の陳昶氏を共同主任研究責任者として挙げている。
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徐教授は、TNIKについて、AIによって導かれ、従来は線維症との関連が示されていなかった標的だと説明している。また、より大規模な第III相試験は、第IIa相で得られた予備的な所見を検証するためのものだとの考えを示した。
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規制上の指定と吸入製剤の開発
レントセルチブは2023年2月、米国FDAからIPFに対するオーファンドラッグ指定を受けた。また2025年5月には、中国のブレークスルーセラピー指定リストに含まれた。こうした指定は開発や規制当局との協議を後押しし得るが、有効性を証明するものでも、承認を保証するものでもない。
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Insilicoは吸入用レントセルチブ溶液も開発している。中国国家薬品監督管理局(NMPA)医薬品審査センター(CDE)は2026年、この吸入製剤の治験開始申請(IND)を承認した。これは経口剤の第III相試験とは別の開発プログラムである。
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今後、注目すべき点
レントセルチブは、生成AIを活用して構築された創薬プログラムが後期臨床開発で成功できるかを問う、注目度の高い事例となる。ただし当面の判断材料は、AIという話題性よりも従来型の臨床開発の問いに集約される。
すなわち、GENESIS-IPF-3が52週間にわたるFVCの年間低下率を説得力をもって抑制できるのか。そして、その効果を許容可能な安全性とともに示せるのか、である。
承認時期の見通しは現時点では条件付きにすぎない。承認申請・承認に進むには、計画通りの組み入れと追跡、肯定的な第III相結果、十分な安全性データ、規制当局との合意、製造体制の整備が必要となる。現段階のレントセルチブは、承認薬ではなく第III相試験中の治験薬である。
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