Hugging Faceのロボティクス部門であるPollen Roboticsが、小型二足歩行ロボット「Microduck」を発表しました。価格は税金・送料別の導入価格で399ドル。予約は2026年8月27日に始まり、初回出荷は2026年のクリスマス前が目標です。2332
見た目は片目で腕のないアヒルですが、単なるデスクトイではありません。Microduckは、強化学習(RL)やシミュレーション、いわゆる「フィジカルAI」を試すための、手に取りやすい実機プラットフォームとして設計されています。最初からいくつかの動作を実行できる一方、開発者は既存の動作を改変したり、新しい動作を学習させたりして、実機に展開できます。212641
価格、サイズ、発売時期
- 価格: 税金・送料別で399ドル(導入価格)
- 予約開始: 2026年8月27日
- 初回出荷: 2026年のクリスマス前を予定
- 発売地域: 北米、欧州、英国を含む地域から展開
- 高さ: 25cm(約9.8インチ)
- 重量: 800g未満
- カラー: Cream、Graphite、Lavender、Sky 18212324
「クリスマス前」という日程は確定日ではなく、あくまで目標です。また、表示価格には税金や送料、地域によっては輸入時の費用が含まれません。1823
片目と“くちばし”が特徴の二足歩行デザイン
Microduckは、腕を持たない片目のロボットです。脚、頭、首が可動し、15個のモーターが独特のよちよち歩きや、しゃがむ動作、転倒からの復帰を支えます。172123
アヒルのくちばしは外観上のアクセントにとどまらず、小さな物体をつかむグリッパーとして機能します。別売りのローラーを取り付ければ、歩行だけでなくローラースケートの動作も可能です。
軽量な機体で二足歩行のバランスを取り、さらに物を扱う。この構成により、ソフトウェア上の制御ポリシーが現実の環境でどう働くのかを試す、コンパクトな実験台になります。
開封してすぐにできること
ローンチ情報では、Microduckには7つの学習済み動作・行動が搭載されると説明されています。紹介されている例は次のとおりです。
- 速度を追従する、よちよち歩き
- 座る・立つ
- しゃがむ
- ボールなどを蹴る
- くちばしで小さな物を拾う、すくう
- 別売りローラーで滑走する
- よくある転倒姿勢から立ち上がる
付属のゲームコントローラーを使えば、コードを書かなくてもすぐ操作できます。これらの動作は完成品として固定された機能ではなく、開発者が新しい動きを学習させる際の出発点です。212326
センサーと内蔵ハードウェア
小さな筐体には、周囲の認識や姿勢制御に使う複数のセンサーが収められています。
- 前面カメラ
- 小型のToF(飛行時間方式)LiDAR
- 動きや向きを測定する2基のIMU(慣性計測ユニット)
- マイクとスピーカー
- Wi‑FiとBluetooth
- 物をつかむ可動式のくちばし
- 製品資料に記載されたNFCハードウェア
ロボットはゲームコントローラーで手動操作できるほか、学習済みの自律制御ポリシーも実行できます。後者が、動作の実験や再学習につながる主要な仕組みです。212425
また、各個体には共通の音声ではなく、個別に生成された声が与えられる予定です。見た目だけでなく音にも個体差を持たせる設計ですが、Microduckの技術的な中心は、やはり学習可能な移動・操作ポリシーにあります。
プロセッサー、メモリ、バッテリー
搭載プロセッサーは、AIアクセラレーターを備えたRockchip RK3566です。メモリはRAM 1GB、ストレージは32GB。取り外し可能な2,600mAhのNP‑F550バッテリーを採用し、連続稼働時間は使い方によって変わるものの、約1時間とされています。1824
製品情報によると、パッケージにはロボット本体、バッテリー、USB-Cケーブル、ゲームコントローラーが含まれます。24
オープンソースの学習環境はどう動くのか
Microduckの開発フローは、次のような「シミュレーション、実機検証、再学習」の循環を想定しています。
- シミュレーションで学習する: MuJoCoの物理シミュレーターをローカル環境、またはHugging Face Jobs上で利用する。
- ポリシーを評価する: 実機に送る前に、シミュレーター内で動作を確認する。
- ロボットへ展開する: 学習済みの動作を実機のMicroduckへ移す。
- 調整・再学習する: 実際の動きを見ながら、ポリシーやシミュレーション環境を修正する。
- 成果を共有する: 新しい動作を公開し、他の開発者が検証・利用・改良できるようにする。
ブラウザー版のMicroduckシミュレーターでは、MuJoCoの物理演算をWebAssemblyにコンパイルし、バックエンドなしでブラウザー内のポリシー推論を50Hzで実行します。脚で歩く構成と、ローラーで滑走する構成の両方を試せます。4
公開予定のソフトウェアスタックには、SDK、シミュレーター、制御ソフトウェア、強化学習用ツール、ポリシー、シミュレーションから実機へ移す「sim-to-real」ワークフローが含まれ、Apache-2.0ライセンスで提供されると報じられています。27
開発コードはGitHubのpollen-robotics/microduckプロジェクトに関連付けられており、開発者は学習・制御スタックを確認したり、フォークしたりできます。41
「オープンソース」はどこまでを指すのか
ここでいうオープンソースの中心は、ロボットの学習に関わるソフトウェアです。既存の動作を出発点に、シミュレーションでポリシーを実行し、学習設定を変え、実機への展開を試せます。
一方、Microduckの機械設計や電子回路の設計データまで全面的に公開されることを意味するわけではありません。現在の製品情報が裏付けているのは、SDKやシミュレーター、制御・強化学習関連のソフトウェアがオープンになるという説明です。27
Hugging Faceのロボティクス戦略における位置づけ
Microduckは、Pollen RoboticsとHugging Faceに関連する先行製品「Reachy Mini」に続く小型ロボットです。Reachy Miniは、オンボードコンピューターを搭載するモデルと外部コンピューターを使うモデルが用意され、表情豊かなロボティクスを試すための導入しやすいプラットフォームとして位置づけられました。12
Pollen Roboticsを買収したHugging Faceは、ソフトウェアAIで培った協調型の開発モデルを、物理世界で動くAIにも広げようとしています。比較的低価格のハードウェア、共有ツール、シミュレーション、再利用可能なポリシーを組み合わせ、ロボット学習への参加コストを下げる狙いです。4346
その意味でMicroduckは、家庭向けの完成された万能ロボットというより、コミュニティー型のロボティクス環境に接続するための実機と見るのが適切です。399ドルという価格は実物のテスト機を入手するハードルを下げ、ブラウザーシミュレーターとオープンな学習ツールは、実機を動かす前の試行錯誤を安くします。
Nvidiaによる買収報道との関係
Microduckの発表と同じ時期に、NvidiaがHugging Faceを買収する可能性も報じられました。ただし、ロボットの発売と買収の話は分けて考える必要があります。
Reutersは、The Informationの報道を引用し、NvidiaがHugging Faceを129億ドルで買収することで合意したと伝えました。一方、CNBCは買収協議が進行中だと報じ、両社が取引を確認していないと説明しています。3335
したがって、広く伝えられている129億〜130億ドルという数字は、現時点では報道された取引額または評価額として扱うべきで、買収完了が確認されたことを示すものではありません。Microduckの発表が示すのは、Hugging FaceがAIモデルやデータセットだけでなく、物理的な相互作用を通じて学習するロボットへ、オープンソースの考え方を拡張しているという点です。