さらに、以下のような変化も起きている。
これらを合わせると、EFの技術リーダー層において近年でも最大級の人事変動といえる。
こうした人事変化と同時に、イーサリアム財団はコア開発を調整するProtocolクラスターの新しいリーダー構造を導入した。
現在は次の3人が共同リードとしてプロトコル開発を統括している。
この体制は、これまで中心的役割を担っていたTim Beiko、Barnabé Monnot、Alex Stokesの構造を引き継ぐ形になる。
それぞれの担当分野は異なる。
この変更により、少人数の中心人物に依存する体制から、より分散型のリーダーシップへ移行する狙いがあると見られている。
今回の人事は、すでに進んでいた組織再編と密接に関係している。
EFは以前の**Protocol Research & Development(PR&D)部門を、シンプルに「Protocol」**へ改称した。
この再編により、開発チームの重点は次の3分野に集中することになった。
再編の過程では人員削減やチーム再配置も行われ、複数のクライアント開発チームや研究グループとの調整を簡素化する狙いがあるとされている。
EFは公式説明の中で、分散型エコシステムでプロトコルアップグレードを実装することは本質的に複雑だと認めている。イーサリアムの開発は単一の企業ではなく、多数の独立したチームや研究者によって進められているためだ。
今回の再編が大きな注目を集めているのは、イーサリアムコミュニティ内部で批判が強まっているタイミングと重なっているためでもある。
よく挙がる論点は主に次の3つだ。
開発スピード
一部の開発者や投資家は、イーサリアムのアップグレードが新興ブロックチェーンより遅いと指摘している。
ガバナンスの分かりにくさ
分散型の調整モデルのため、最終的な意思決定の責任者が誰なのか見えにくいという問題がある。
コミュニケーション不足
ロードマップの変更や優先順位について、財団の説明が遅いと感じるコミュニティメンバーもいる。
一方、EFを擁護する立場からは、イーサリアムは短期的な機能追加よりもセキュリティと分散性を優先しているという反論もある。
内部の変化にもかかわらず、イーサリアムの技術ロードマップ自体は前進している。
次の主要アップグレードはGlamsterdamだ。
ノルウェー・スヴァールバル諸島で開催された開発者の相互運用イベントでは、複数のクライアントチームが集まり、機能の安定化や実装調整が進められた。
このアップグレードで予定されている主な改善には次のようなものがある。
さらに研究では、アップグレード後にガス上限を約2億ガス程度まで引き上げられる可能性も議論されている。
Glamsterdamを複雑にしすぎないため、いくつかの高度な変更は次のフォークへ移された。
後続アップグレードとされるHegotáでは、次の技術が導入される可能性がある。
これらはGlamsterdamから移され、2026年後半のアップグレードとして検討されている。
このように段階的に機能を分割することで、開発者は短期アップグレードを確実にリリースしつつ、より難しい技術研究を並行して進められる。
今回の動きは、人事問題だけでなく、イーサリアム財団の役割そのものにも関係している。
イーサリアムは多くのブロックチェーンと違い、開発が単一の企業に集中していない。独立した研究者、企業、クライアントチーム、オープンソース開発者が分散して参加している。
EFはネットワークを直接支配する組織ではなく、主に次の役割を担う。
この構造は分散性という理念に合致する一方で、組織変更や人事の影響が外部から見えやすく、混乱しているように見えることもある。
イーサリアム財団は現在、明らかに大きな転換期にある。しかし、それは必ずしも開発の停滞を意味するわけではない。
リーダー交代、組織再編、ロードマップの優先順位見直しは、イーサリアムが次の成長段階に適応するための試みとも言える。
最終的な評価は実行力にかかっている。新しいプロトコルリーダーがGlamsterdamなどのアップグレードを予定通り進め、開発調整とコミュニケーションを改善できれば、今回の変化は危機ではなく、イーサリアムが成熟した段階へ進む転換点として見られる可能性が高い。