報道によれば、サムスンは給与交渉の中で以下のようなボーナス案を提示したとされる。
この大きな差が、社内の不満を急速に高める要因となった。
緊張が高まる中、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は5月16日、日本出張から帰国後に記者団へ対応し、異例の公開謝罪を行った。
彼は
「会社の内部問題により世界中の人々や顧客に不安と懸念を与えたことを心からお詫びする」
と述べ、労使双方に団結を呼びかけた。
サムスンのトップがこのような形で謝罪するのは珍しく、事態の深刻さを示している。
サムスン最大の労組である**全国サムスン電子労働組合(NSEU)**は、現在のボーナス制度が社員に十分な利益還元をしていないと主張している。
交渉で示された主な要求は次の通り。
例えば労組は、営業利益の15%をボーナスとして従業員に分配する案を提示したとされる。一方で会社側は**約10%**を対案として示したと報じられている。
また労組は、ボーナス算定方式を経営判断で変更できないよう雇用契約に明記することも求めている。
韓国政府の仲介による賃金交渉も行われたが、ボーナス制度と利益配分の割合で双方の溝は埋まらなかった。最終的に協議は決裂し、ストの可能性が現実的なものとなった。
背景には、サムスン半導体事業の構造問題もある。AI需要で急成長するメモリ事業と、競争や赤字に苦しむロジック/ファウンドリ事業の業績格差が大きいことが、全社共通の報酬制度を難しくしている。
ストライキには4万5000人以上が参加する可能性があり、実施されればサムスン史上最大の労働争議となる。
報道によっては5万人以上が参加する可能性も指摘されているが、組合員が個別に参加を決めるため、実際の人数は流動的とみられている。
韓国・平沢(ピョンテク)の半導体工場ではすでに大規模集会が開かれ、強い支持が示されている。
サムスンは世界最大のメモリ半導体メーカーで、AIデータセンター、スマートフォン、PC、サーバー向けに重要な部品を供給している。
労組側は、ストが実施されれば半導体生産に影響が出る可能性があると警告している。
特に半導体工場は24時間体制で稼働し、専門人材に依存しているため、重要な技術者や保守スタッフが離脱すれば生産への影響が出る可能性がある。
最も懸念されているのは、DRAMとNANDメモリの供給だ。
サムスンはこの市場で圧倒的なシェアを持つため、大規模ストが長期化すれば世界のDRAM供給の一部が市場から消える可能性も指摘されている。
AIデータセンター拡張によりメモリ需要はすでに強く、供給がさらに逼迫する恐れがある。
この問題が国際的に注目されている理由は、サムスンが韓国経済と世界のテクノロジー産業の両方で重要な存在だからだ。
韓国政府はすでに関係閣僚会議を開き、事態を注視している。半導体輸出は韓国経済の中核であり、生産混乱が起きれば国家経済への影響も懸念される。
またスマートフォンメーカーやAIデータセンター事業者など、サムスンの顧客企業にとっても、供給が安定するかどうかが重要な問題となっている。
今回の紛争は単なる賃金交渉ではなく、AIブームによって急拡大する半導体利益を企業と従業員の間でどう分配するのかという、業界全体に共通する問題を象徴している。
もしストが実行されれば、サムスンの労使関係だけでなく、AI時代のテック企業の報酬モデルにも影響を与える出来事になる可能性がある。