一部の国では政策も市場拡大を後押ししている。例えばイタリアでは政府の補助金導入によってEV市場がほぼ倍増し、その需要の一部を中国メーカーが取り込んでいる。
つまり、中国ブランドは既存メーカーのシェアを奪うだけでなく、急拡大するEV市場の成長そのものにも乗っている形だ。
もう一つの大きな要因は、中国メーカー側の戦略変化だ。
中国は世界最大のEV市場だが、需要の伸びは以前ほど安定していない。2026年4月の中国国内EV小売販売は約61万4,000台で前年より11%減少した。
そのためメーカーは海外市場への輸出を強化している。たとえばBYDは4月に**32万台以上の新エネルギー車(NEV)**を販売し、海外販売が大きく伸びた。
規模が大きく購買力も高い欧州は、中国メーカーにとって最重要の輸出先の一つとなっている。
中国ブランドが欧州EV市場で15%を超えるシェアに到達した背景には、主に次の2つがある。
・販売台数の急増:中国ブランドEVの登録台数は4月に前年から2倍以上に増えた。
・ブランド展開の拡大:BYDや奇瑞などが欧州で車種ラインアップや販売網を急速に拡大している。
この結果、中国メーカーは「新規参入ブランド」から、欧州EV市場の主要プレイヤーへと急速に変わりつつある。
欧州市場での中国メーカーの戦略の中心になっているのが**プラグインハイブリッド(PHEV)**だ。
EUは中国政府の補助金問題をめぐる調査の結果、中国製のバッテリーEVに対し最大約45%の追加関税を課している。
しかし、この措置は主に純電気自動車(BEV)を対象としている。
プラグインハイブリッドの場合、輸入関税は通常約10%程度にとどまるため、中国メーカーはPHEVを積極的に投入している。
アナリストによれば、この戦略はEV関税の影響を回避するためのものとみられている。
さらにPHEVは、
・短距離は電気で走行
・長距離はガソリンエンジン
という特性を持ち、充電インフラが完全に整っていない地域でも使いやすい点が欧州の消費者に受け入れられている。
中国メーカーの競争力は価格と技術の組み合わせにもある。
中国ブランドのEVは、
・より新しいモデル
・比較的低価格
・装備やソフトウェア機能が豊富
といった特徴を持つ場合が多く、これが欧州でのEV普及を後押ししている。
特に中国はバッテリー供給網を国内に強く持っているため、航続距離や先進運転支援システムなどを比較的低コストで提供できるとされる。
燃料価格の高騰や電動化への関心の高まりもあり、欧州の消費者にとってこうした「コストパフォーマンス重視のEV」は魅力的な選択肢となっている。
この流れはEV市場にとどまらない。
中国ブランドは現在、欧州の乗用車市場全体でも約10%に迫るシェアに近づいている。
特に電動車(EVとハイブリッド)では存在感が大きく、2025年末には**欧州の電動車市場の約16%**を占めたと分析されている。
これは、電動化という自動車産業の将来を巡る競争で、中国メーカーが急速に勢力を伸ばしていることを示している。
中国メーカーの欧州市場での急成長は、いくつかの要素が重なって生まれている。
・欧州でのEV需要の急拡大
・中国メーカーの輸出拡大
・価格と技術の競争力
・関税を回避するPHEV戦略
こうした要因によって、中国ブランドはEV市場で15%を超えるシェアを獲得するまでになった。
この傾向が続けば、中国メーカーは欧州の自動車市場における価格競争、技術競争、そして電動化のスピードそのものに大きな影響を与える存在になりそうだ。