CMIはすでにカザフスタン国内で「中国-カザフスタン-ロシア-欧州」を結ぶテラビット級の基幹回線を運営している。今回の計画は、これをカザフスタンとウズベキスタンでさらに拡張し、チャン氏が「複数経路・高帯域のデジタル橋」と呼ぶ強靭なネットワークへと昇華させる試みだ 。
CMIが描く成長曲線は極めて急勾配だ。チャン氏はRTHKのインタビューで、現時点での投資額は約1000万香港ドル(約1億4000万円)程度だが、需要の伸びに応じて「数年で倍増する」と明言した 。
その強気の根拠は、この地域のデジタル化が「これから」というタイミングにある。中国本土の5G市場が飽和しつつあるのとは対照的に、中央アジアで5Gネットワークが商用化されたのはようやく2023年のことだ。チャン氏は「指数関数的な伸び」という言葉でその潜在性を表現し、特にカザフスタン政府がAIとデジタル化推進のための新部署を立ち上げた政策動向を「スマートソリューション分野で大きな機会を生む」と歓迎している 。
CMIの戦略は、回線を引くだけの「土管屋」にはとどまらない。チャン氏は、現地の5G開発が現状では従来型のコンシューマー市場に偏重しており、「法人向けサービスエコシステムはまだ進化の途上」だと指摘。その空白地帯を、自社のソリューションで埋める構えだ 。
特に同社が力を入れるのが、資源国ならではの「スマート鉱山」向けサービスである。具体的には、5GプライベートネットワークとOnePowerプラットフォームを組み合わせたソリューションに加え、スマート石油化学プラントやスマート工業団地向けの技術も売り込む 。
この産業DXの動きは、2026年6月に香港の李家超(ジョン・リー)行政長官の立ち会いのもとで正式に始動する。CMIはカザフスタンの国営郵便事業者「カズポスト」との間で、物流と通信を融合させた統合スマートプラットフォームの開発に関する覚書(MoU)を締結する予定だ 。これは、デジタルと物理のサプライチェーンを結びつけ、粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)と中央アジア、欧州を結ぶハブとしての香港の地位を強化する動きと言える 。
チャン氏の戦略会見で一貫していたのは、CMIを「中国本土企業の海外進出を支える技術基盤」と位置づける姿勢だ。同社のネットワーク拡大は、中国製の通信機器や技術標準、サービスソリューションを中央アジアに輸出するためのフロントランナーとしての役割を担う。チャン氏は香港を「スーパーコネクター」かつ「スーパーバリューアダー(高付加価値化装置)」と表現し、その独自の地位を最大限に活用する考えを示した 。
これは、一帯一路構想のデジタル版とも言える布陣だ。グレーターベイエリアの製造業の中心地から、中央アジアの市場や資源、そして欧州までをシームレスに繋ぐ越境デジタル経済圏の構築を狙う 。なお、CMIの国際伝送帯域幅はすでに406T(テラビット)、グローバルの拠点(PoP)数は446に達しており、この壮大なビジョンを支える物理的な裏付けは整いつつある 。