ブラウンはFIA会長モハメド・ベン・スライエム宛てに詳細な書簡を送り、F1におけるチーム同士の「アライアンス(提携)」や共有所有構造を排除するルール整備を求めている。これを受け、FIA側もこの問題を正式に検討していると認めており、将来的な規制変更の可能性が現実味を帯びてきた。
ブラウンの主張の中心にあるのは「競技の公平性」だ。彼は、チーム間に所有関係や戦略的な提携がある場合、完全に独立したチームにはない優位性が生まれる可能性があると指摘する。
例えば、次のような状況が起こり得ると懸念されている。
こうした関係は「各チームが独立してチャンピオンシップを争う」というF1の前提を弱めかねない、というのがブラウンの見方だ。さらに彼は、サッカーなど多くの主要スポーツでは利益相反を避けるため、複数チームの所有が制限されている点も指摘している。
また、ブラウンは「かつては財政的に弱いチームを支える目的でこうした仕組みが存在した」と認めつつも、現在のF1はコストキャップ(予算上限)と商業収入の拡大によって財政状況が改善しており、その必要性は薄れていると主張する。
現在のF1で最も明確な例が、レッドブルの体制だ。レッドブル社は、トップチームのRed Bull Racingと姉妹チームのRacing Bulls(旧AlphaTauri)の2チームを所有している。
この構造は長年存在してきたが、ブラウンは「このモデルが今後F1全体に広がるべきではない」と警鐘を鳴らしている。
議論をさらに加速させたのが、メルセデスがルノー系チームであるアルピーヌの株式取得を検討しているとの報道だ。仮に少数株であっても、ライバルチーム間で新たな資本関係が生まれる可能性があり、グリッド全体に同様の構造が広がる懸念が指摘されている。
ブラウン自身は、この批判が特定のチームだけを狙ったものではないと強調しており、「誰であっても同じルールであるべきだ」という立場を取っている。
ブラウンはまた、チーム同士の近い関係がレース中の判断やチーム運営にも影響する可能性を指摘している。
具体的には、姉妹チームや提携チームが特定のライバルのレース展開に影響を与えるような状況や、風洞設備、ソフトウェアツール、技術データなどが間接的に共有される可能性が問題視されている。
さらに、関連チーム間で人材が頻繁に移動すれば、技術的知見や戦略情報が流れることになり、実質的に独立した競争とは言えなくなるという懸念もある。
FIA会長モハメド・ベン・スライエムは、この問題について「現在検討中」であると認めている。議論が本格化した背景には、メルセデスとアルピーヌの資本関係の可能性が浮上したことがある。
彼は個人的な見解として「2チームを所有するのは正しいやり方ではないと思う」と述べている一方、制度としては複雑な問題であり慎重な検討が必要だとも語っている。
FIAはすでに内部で担当者を割り当て、複数チーム所有がスポーツの倫理や競技の公平性に与える影響を調査しているとされる。
ただし、ベン・スライエムは少数株式などの投資については条件付きで許容される可能性にも言及しており、完全禁止だけでなく複数の規制モデルが検討されている可能性がある。
この問題が「規制変更の可能性がある局面」と言われる理由は主に3つある。
第一に、ブラウンの主張が単なるメディア発言ではなく、FIA会長宛ての正式な書簡という形で提起された点だ。
第二に、FIA自身がこの問題を調査対象として認め、公式に検討していると表明したこと。
そして第三に、メルセデスとアルピーヌの資本関係の可能性など、新たなチーム間リンクが現実的な話題になり、複数チームモデルが今後さらに広がる可能性が出てきたことだ。
これらが重なったことで、F1は「チームの独立性」をどこまで守るべきかという根本的なルールを見直すかどうか、重要な分岐点に立っている。
もしFIAが規制を強化すれば、将来的にはチームの所有構造や投資の形、さらには技術協力の範囲まで明確なルールが定められる可能性がある。