ビットコイン価値に対するプレミアム → 株式発行 → BTC買い増し → 1株当たりのビットコイン・エクスポージャー増加 → 投資家需要の継続
ただし、この循環はプレミアムに依存する。MSTRの株価がNAVに近づけば、新株発行の魅力は低下する。NAVを下回って取引される場合、株式発行は既存株主にとって価値を高めるどころか、希薄化につながる可能性がある。
もっとも、数値の比較には注意が必要だ。普通株だけを対象にするか、負債や優先証券まで含めるかによって計算結果は変わる。最近の報道でも、1倍を下回る数値から1.05倍前後まで、異なる測定値が示されている。
大切なのは、単一の「正しい数字」を決めることではない。Strategyの評価が、投資家がどれだけのプレミアムを支払うかに大きく左右されるという点だ。
現物ビットコインETFは、ビットコインを保有し、その価値をファンドの仕組みを通じて追随するよう設計されている。ETFの設定・償還メカニズムは、市場価格を純資産価値(NAV)に近づける役割を持つ。企業の資金調達モデルに対するプレミアムを株主が維持し続ける必要はない。
この違いにより、IBITではStrategy株に付随する複数のリスクを相対的に抑えやすい。
もちろん、IBITも無リスクではない。ビットコイン自体の値動きは大きく、ETFには手数料や商品構造に関する考慮点もある。ヘイズの比較は、あくまで相対的な複雑さについての議論だ。IBITがビットコインへの直接的な市場エクスポージャーに近いのに対し、Strategyは「ビットコイン価格への賭け」に加えて、資金調達モデルと企業評価への賭けも含む、変動の大きい株式投資だといえる。
最近の報道は、規制された暗号資産商品が、暗号資産関連株とより直接的に競合していることを示している。バンク・オブ・アメリカの2026年第2四半期の提出書類については、Strategyの保有株数が約400万株、評価額約4億9,500万ドルから、約120万株、約1億1,000万ドルへ大幅に減少したと報じられた。
また、バンク・オブ・アメリカは第2四半期に、現物イーサリアムETFを約2,360万ドル保有していたと報じられている。同じ報道では、2日間の資金流入がビットコインETFで4億8,680万ドル、イーサリアムETFで1億200万ドル超だったとされる。
こうした数字は、規制されたETFが機関投資家にとって重要なデジタル資産投資の経路になりつつあるという、ヘイズの大きな見方を裏付ける材料になる。ただし、これだけで機関投資家が一斉にStrategyから撤退したと結論づけることはできない。
米証券取引委員会(SEC)に提出される13F報告書は、一定時点の保有状況を示すスナップショットにすぎない。ポートフォリオ運用者の意図を完全に説明するものではなく、運用方針の変更、ヘッジ、売買判断なども数字に影響し得るためだ。
両者の実務的な違いは、比較的明確だ。
Strategyは、プレミアムが拡大し、資金調達モデルが株主に有利に働く局面では、ビットコインやETFを上回る可能性がある。一方、プレミアムが縮小し、新株発行の効果が薄れたり、企業の債務・支払い義務が重荷になったりすれば、逆に劣後することもある。
ヘイズの結論は、どちらが常に優れているというものではない。どのようなエクスポージャーを設計したいのか、という問題だ。
単にビットコインに連動する投資商品を保有したいのであれば、IBITはStrategyに組み込まれた評価倍率や企業のバランスシートの複雑さを避けやすい。反対に、ビットコインに連動する株式として、より大きな上振れと下振れを狙うなら、Strategyは別の選択肢になり得る。ただしそれは、ビットコインそのものではなく、ビットコインと企業の資金調達モデルを組み合わせた、より複雑な金融商品だ。