アップルはこれらのコンテンツ契約に「9桁のドル予算」(数百億円規模)を想定しているとされる。これは、Siriがニュースクエリを処理する能力を大幅に向上させるための、同社の本気度を示すものだ。契約は複数年を想定しているが、参加出版社の数や契約期間は未定である。
アップルの狙いは、Siriが時事問題について、刻々と変化する最新情報を正確に答えられるようにすることだ。現在のSiriは主に静的なウェブ検索結果に依存しているが、ライセンスを受けたニュースコンテンツを活用することで、速報ニュース、天気、スポーツ、金融データなど、時間に敏感な情報を提供できるようになる。
今回の交渉は、過去の失敗を踏まえたアップルの戦略転換でもある。2024年末、アップルはAIによるニュース通知要約機能をリリースしたが、事実誤認を連発し、出版社やユーザーから批判を浴びた。同社はその後、この機能を一時停止または縮小した。それから約2年、アップルは許可なくニュースをスクレイピングしたり要約したりするのではなく、正式なライセンス契約を結ぶ方向へと方針を転換した。
今回の交渉には、まだ多くの不透明な点が残る。どの出版社が参加するのか、具体的な名前は明らかにされていない。音声アシスタント向けの「利用ごと課金」には前例がなく、アップルがどのように使用状況を追跡・計算するのかも不明だ。また、既存のAIトレーニングや要約機能との兼ね合い、音声のみの応答での引用表示方法なども課題として残っている。アップルは本件についてコメントを拒否している。
アップルとニュース出版社との交渉は、Siriが最新情報を提供するツールとして大きく進化する可能性を示している。「利用ごと課金」という新モデルと9桁規模の予算は、アップルがGoogle、Amazon、OpenAIなど競合他社に対抗するため、ライセンスを受けたリアルタイムニュースコンテンツに大きく賭けていることを意味する。この交渉の行方は、テクノロジー企業がAIによるニュース配信に対して出版社にどのように報酬を支払うべきか、その先例となる可能性がある。