これにより、Alipay+に接続するアプリは、PVS網での「QRコード決済」と、Mastercard網での「タッチ決済」という2つの手段を獲得。すでにクレジットカードの非接触端末がある場所ではMastercard、PVSと繋がる店舗ではQRコードと、ユーザーは状況に応じて使い分けられるようになるのです。
2025年10月30日、アント・インターナショナルは、「組み込み型金融」の仕組みを提供する南米有数の企業「R2」への戦略的出資を発表しました 。これは、1兆ドルを超える信用ギャップ(資金需要に対して供給が追いついていない状況)に直面する南米の中小企業(SME)の資金調達を支援するのが狙いです
。
R2は、Uber Eats、Rappi、inDrive、PayUといったプラットフォームに対し、APIを通じて加盟店に運転資金を融資するホワイトラベル(自社ブランド化可能な)サービスを提供しています 。この投資により、アント・インターナショナルは、単に旅行者の「決済」を担うだけでなく、現地加盟店の「成長」そのものを支える金融インフラにも深く関与することになります。
こうした戦略の背景には、揺るぎない成長実績があります。アント・インターナショナルが発表したところによると、ラテンアメリカを含む主要新興市場において、2025年に処理したデジタル越境取引は20億件を超えました 。同社は、この地域のクライアントがデジタル決済やクロスボーダー商取引で力強い成長を遂げていると強調しています。
決済インフラの整備は「受け皿」に過ぎません。アント・インターナショナルは、旅行者をその受け皿へと呼び込むための仕組みも同時に作り上げています。
2025年7月、同社はデジタルウォレットに直接組み込まれるAI旅行アシスタント「Alipay+ Voyager(アリペイプラス・ボイジャー)」を発表しました。これは、Agodaやフリガシー(Fliggy)、Trip.comといった旅行予約サイトと連携し、1億以上の加盟店へのアクセスとAI技術を組み合わせたものです 。ユーザーは、使い慣れた決済アプリの中で、テキストや音声で旅程を計画し、予約や現地サービスの購入までを母国語で行えます
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また、観光地を売り込むマーケティング面でもAIが活用されています。例えば、タイ国政府観光庁はAlipay+と連携し、AIによるデータ分析で旅行者の行動パターンを解釈、「タイの人気スポット」や「穴場グルメ」といったテーマ別ランキングを発信するキャンペーンを2026年5月に開始しました 。シンガポール政府観光局との複数年にわたる戦略的パートナーシップも同様で、Alipay+のネットワークを活用し、アジアからの旅行者をターゲットにしたデジタルマーケティングを展開しています
。
Alipay+のネットワークに参加する加盟店にとって、これらのツールは強力な集客手段です。旅行者の出発前や滞在中に、位置情報に基づいたクーポンやロイヤリティプログラム、プッシュ通知によるキャンペーンを直接届けることが可能になるからです 。
つまりアント・インターナショナルは、旅行者が旅行を計画する段階からAIで伴走し、予約を取り、そして現地ではQRコード一つで決済できる——そんなシームレスな体験を提供することで、南米の旅先での消費活動を、まるごと自社のエコシステムに取り込もうとしているのです。
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