業界全体が落ち込む中、ファーウェイは際立った例外と言えるだろう。Counterpointのデータによると、2026年上半期に出荷台数の増加が見込まれる中国の主要ブランドは、ファーウェイただ一つであった 。この耐久力は偶然の産物ではない。XiaomiやTranssionが、価格に敏感でコスト転嫁が極めて難しい低価格帯の大量販売モデルに大きく依存しているのに対し、ファーウェイの強みはプレミアム価格帯にある
。
ファーウェイの顧客層は、端末が1万円以上値上げされても購入意欲が大きく減退することはなく、部品コストの上昇分を吸収するにせよ、価格に転嫁するにせよ、需要が急減するリスクは比較的小さい。その結果、国内市場全体が苦境に立たされ、メモリコストが過去最高を記録する中でも、ファーウェイは2025年の年間シェア16.9%を獲得し、メモリ危機が深刻化する直前の中国市場で首位の座を確保し続けることができたのである 。ハイエンド市場を重視する戦略的なポジショニングが、今回のサプライチェーン危機を逆に競争上の盾へと変えているのだ。
調査会社Counterpoint Researchは、2026年通年の世界スマートフォン出荷予測を大幅に下方修正した。同社の新たな予測では、世界全体の出荷台数は2.1%の減少となる見通しだ。これは、横ばいからプラス成長としていた従来見通しからの大幅な下方修正である 。同社は、その主な要因として、メモリ不足によって「部品コストが急上昇している」ことを明確に挙げている
。
初期データは、通年予測が示唆する以上の厳しい現実を映し出している。2026年第1四半期の世界の実出荷台数は前年同期比6%も減少したが、これはDRAMとNANDの不足が完成品メーカー(OEM)の生産を混乱させ、もともと弱かった消費者心理に追い打ちをかけたためだ 。痛みは均等には分配されていない。Counterpointの指摘によれば、AppleとSamsungは、その巨大な事業規模、サプライチェーンのコントロール力、そしてプレミアムブランドの価格決定力によって、この嵐を乗り切るのに最も有利な立場にいる
。事実、Appleの2026年第1四半期の出荷台数は5%増加し、同期間として初めて世界市場の首位を獲得している
。
この危機の根源は上流工程にある。メモリ業界の巨人であるサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンは、その生産能力を圧倒的にAIデータセンター向けのHBM(広帯域メモリ)へと振り向けてしまった。この大転換が、モバイル端末やPC向けの従来型DRAMとNANDの供給を枯渇させ、価格を記録的な水準に押し上げ、その結果、端末メーカーたちを残り少ない供給量を巡る熾烈な争奪戦へと追い込んでいるのである 。業界アナリストの共通見解によれば、このメモリ不足は早ければ2027年まで長引く恐れがあるという
。
スマートフォン業界は今、半導体を巡る地殻変動とも言える構造的転換に直面している。AIの底知れぬメモリ需要が、北京の街で売られるミッドレンジスマホの価格を左右するようになった時点で、かつてのサプライチェーンの常識はもはや通用しない。ファーウェイがそうであるように、中国ブランドにとって「プレミアム市場へのシフト」は、もはや成長戦略ではなくサバイバルのための戦術となりつつある。
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