MOLの制限と政府の制限には違いもある。MOLは「1回あたり30リットル」だったのに対し、政府の全国ルールは「1日あたり50リットル」だった。いずれも、スロベニアの燃料在庫が完全に失われたことを示す措置ではなく、異常な需要を一時的に抑えるための緊急策だった。
給油所の混乱は、米国・イスラエルとイランをめぐる紛争に関連した、より広範なエネルギーショックの一部だった。ホルムズ海峡周辺の混乱で、原油だけでなく、ガソリンや軽油など精製製品の輸送も滞った。
さらに、中東の製油所が損傷したり操業を停止したりした。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、中東の精製能力は第2四半期に戦前の水準を1日290万バレル下回り、第3四半期にも同220万バレルの不足が残る見通しだった。ウクライナによる攻撃はロシアの精製量を約20年ぶりの低水準近くまで押し下げ、中国の精製量と燃料輸出の減少も供給を圧迫した。
ここで重要なのは、ガソリンや軽油が「原油そのもの」ではなく、製油所で加工された製品だという点だ。原油がどこかに残っていても、製油所が損傷していたり、原油を運び込めなかったりすれば、軽油は不足する。
原油価格と小売燃料価格は、常に同じ方向へ動くわけではない。製油所の停止、輸送制約、在庫不足、精製マージンの上昇が重なると、原油価格が下落してもディーゼルは高止まりする。
米エネルギー情報局(EIA)は、北海ブレント原油の平均価格が2026年第2四半期の1バレル103ドルから、第4四半期には70ドルへ下落すると予測した。これは、原油市場の見通しが大きく変動していることを示すもので、原油が一貫して90ドル前後で推移するという意味ではない。
精製段階のひっ迫は、マージンにも表れた。Reutersによると、欧州の低硫黄軽油先物価格とブレント原油の差は、7月に1バレル74.66ドルまで拡大した。これは、原油をディーゼルに加工するコストや需給を含め、精製燃料が原油に比べてどれほど高くなっていたかを示す指標だ。
各国の影響は一様ではなかった。政府による価格上限、減税、緊急の供給対策が組み合わされ、国ごとに異なる形で危機が表れた。
モルドバでは、物流の停滞と価格上昇が別の形で深刻化した。7月下旬、規制対象の軽油価格は約1リットル1.62ユーロまで上昇。軽油が売り切れた給油所が相次ぎ、政府はエネルギーと水資源の管理について30日間の警戒措置を宣言した。
これらの数字は、欧州全体が同じ価格や同じ不足に直面したことを意味しない。製油所の被害、輸送網の制約、各国の価格政策が組み合わさり、市場ごとに異なる結果を生んだことを示している。
提供された資料が明確に確認しているのは、3月22日に50リットル・200リットルの制限が導入されたことと、販売会社がその前から販売量を絞っていたことだ。
一方、スロベニアの措置が5月下旬に正式解除されたという情報については、提供資料の中に十分な裏付けがない。このため、その日付は確定した経過として扱うべきではない。
スロベニアの事例が示すのは、燃料危機が国の備蓄タンクの空っぽから始まるとは限らないということだ。最初に現れるのは、給油所の品切れ、長い列、購入量の制限かもしれない。