現地報道は、この場をウィリアム・ルト大統領とマクロン氏も出席するパネル討論として伝え、テーマにはテクノロジー、教育改革、イノベーション、アフリカのデジタルな未来などが含まれていたとしています 。一方、別の報道では、文化やアーティスト、若い登壇者に焦点を当てたセッションとして描かれました
。
MarketScreenerが掲載した書き起こしによると、マクロン氏は会場に向かって、次のような趣旨の発言をしました。
みなさん、すみません。ヘイ、ヘイ、ヘイ。申し訳ないが、これだけの騒音の中で、文化について語り、熱意を持ってここに来た人たちがスピーチをするのは不可能です。これは敬意をまったく欠いています。個別に話したい、あるいは別の話をしたいなら、個別会談用の部屋に行くか、外に出てください。ここに残るなら、話している人たちに耳を傾ける。同じルールでやりましょう。ありがとうございます。
それでも動画が波紋を広げたのは、この場面が単なるイベント運営上の注意ではなく、政治的な映像として見られたからです。報道では、この介入がオンライン上で批判を呼び、フランスがアフリカとの関係を立て直そうとしていることにも改めて注目が集まったとされています 。
特に不都合だったのは、叱っている側がフランス大統領であり、叱られている側がアフリカで開かれたサミットの聴衆だったことです。しかも、そのサミットは、フランスとアフリカの関係をより対等なものに見せるための場でもありました 。
AP通信はAfrica Forward Summitについて、かつて「支配的」と見られてきた旧宗主国フランスが、アフリカ諸国との関係を「対等なパートナーシップ」へ移す新政策を示す場だと説明しています 。またIrish Timesは、近年アフリカでの影響力が大きく低下したフランスが関係のリセットを図る中で、この叱責動画が「不協和音」になったと論じました
。
つまり反発は、「静かにしてほしい」という要請そのものだけに向けられたわけではありません。旧宗主国の大統領が、対等な関係を掲げる場で、アフリカの聴衆を上から叱るように見える。その象徴性が火種になったのです。
マクロン氏のナイロビ訪問は、フランスがアフリカでの立ち位置を作り直そうとする大きな流れの一部でした。Le Mondeは、マクロン氏が就任時に旧植民地との関係刷新を約束したものの、危機、誤解、不満、挫折によって、その試みがたびたび軌道を外れてきたと報じています 。
開催地がケニアだったことにも意味があります。今回のサミットは、フランスの伝統的な影響圏とされてきたフランス語圏アフリカではなく、英語圏の東アフリカで開かれました 。マクロン氏自身もケニアで、フランス語圏アフリカにおけるフランスの古い「勢力圏」の時代は終わったと主張しています
。
ただし、そのメッセージは厳しい現実を背景にしていました。AP通信は、サミットでは前年に完了した西アフリカからの仏軍撤退や、近年のフランスの地域的影響力の低下にも注目が集まると伝えています 。Africanewsも、マクロン氏がナイロビの経済サミットで欧州のアフリカ関与を擁護し、中国のアプローチと対比させたうえで、アフリカが直面する課題を植民地支配の過去だけに帰すことはできないと論じたと報じました。マクロン氏は2017年の就任後、植民地主義を非難していたとも述べています
。
今回の一件は、会場マナーをめぐる短い注意として始まりました。しかし外交では、何を言ったかだけでなく、誰が、どこで、どんな姿勢で言ったかが意味を持ちます。
フランスがアフリカとの関係を「対等」に作り直すと訴える場で、フランス大統領がアフリカの聴衆を公然と叱る映像が広がった。そこに、フランスが離れようとしているはずの上下関係を見た人がいたことが、反発の核心です 。
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