クレパチ氏は、ウクライナ経済が存続できた背景には、欧米からの大規模な金融支援があると説明した。報道によれば、ウクライナの軍事・国内支出に対する支援規模はロシアの予算のほぼ半分に相当し、支援総額はロシアからの資本流出額の数倍に達すると同氏は述べた。こうした外部支援がなければ、ウクライナ経済は崩壊していたとも指摘した。
この論点は、クレパチ氏のより大きな主張の一部だった。ロシア経済が制裁下でも一定の耐性を示していることは、広い意味での競争に勝っていることを意味しない。ウクライナの経済活動が続いているのは外部資金に大きく依存している一方、ロシアも戦争、制裁圧力、インフラへの攻撃による負担を積み上げているという見方だ。
クレパチ氏は、ロシアが将来、深刻な社会危機に直面する可能性にも触れた。しかも、その危機は予想外の形で表面化し、いったん始まれば制御が難しくなるかもしれないという。例として挙げたのは、1917年の二月革命と、1991年のソ連崩壊だった。
これは、ロシアが必ず国家として分裂するという予言ではない。経済が全面崩壊を免れたとしても、蓄積する損失、格差、成長率の低下が将来の危機を生む条件になり得るという、より限定的な警告だった。報道では、何らかの社会危機が最終的に起きる可能性について、同氏は「ほぼ確信している」と語ったとされている。
この点は、現時点では確認されていない。独立系メディア「ザ・ベル」は、クレパチ氏を知る人物の話として、VEB.RFのイーゴリ・シュワロフ総裁が「上からの電話」を受けて解任を決めたと報じた。他の媒体もこの内容を引用しているが、匿名情報源に基づく報道であり、クレムリンが公式に認めたものではない。
したがって、現在確認できる範囲での慎重な結論はこうなる。5月の発言が解任の要因になったと複数の報道が伝えている一方、最終的な指示がどの経路で出されたのかは、公には明らかになっていない。
そのため、今回の発言は外部の評論家による批判とは受け止められにくかった。クレパチ氏は、ロシアの経済政策機構の内部で長年経験を積んだ高位のエコノミストだったからだ。報道では、エリビラ・ナビウリナ氏やアンドレイ・ベロウソフ氏らと同じ、ロシアの経済政策を担ってきた世代の人物として位置付けられている。ただし、利用可能な報道だけでは、各人物との具体的な職務上の関係までは確認できない。
今回の解任は、一人の幹部人事にとどまらない意味を持つ可能性がある。ロシアの国家機関にいた著名なエコノミストが、戦争をめぐる長期的な経済競争でロシアが後れを取っていると公の場で語り、その発言が広く拡散した結果、政治的なコストを負うことになったためだ。