前半19分、サラーがペナルティエリア手前のエマム・アシュールへ完璧なパスを送る。アシュールは力強く、そして美しくボールを捉え、ベルギー代表の守護神ティボー・クルトワの牙城を破るシュートをゴール右下隅へ突き刺した 。代表初ゴールとなるこの得点でエジプトが1-0とし、スタジアムは歓喜の渦に包まれた
。
エジプトのリードは後半まで保たれ、ベルギーのルディ・ガルシア監督に決断を迫る展開となる。
0-1とリードを許した後半66分、ベルギーはロメル・ルカクを投入する。その影響は即座に表れた。ピッチに入ってからわずか22秒後、ルカクはトーマス・ムニエの低く速いクロスに合わせ、ゴール前の6ヤードボックスに猛然と走り込む。この圧倒的な存在感にプレッシャーを感じたエジプトのディフェンダー、モハメド・ハニーは懸命にボールをクリアしようとするも、その勢い余って自らゴールネットを揺らすオウンゴールを献上。スコアは1-1の振り出しに戻った 。
多くのメディアが「彼がいるだけで攻撃に火がついた」と評したルカクの貢献度。それはまさに「たたずまい」そのものが相手にとって脅威であり、エジプトがより危険なチームに見えていた試合の様相を、一瞬で変えてしまう神がかり的な交代劇だった 。
残り30分、ベルギーはケヴィン・デ・ブライネやジェレミー・ドクがエジプトの守備を何度も脅かし勝ち越し点を狙うも、ファラオたちは持ちこたえた。手にした勝ち点1は、同時にこぼれ落ちた勝ち点2の感覚としてエジプトに刻まれた 。
データが示すのは、まさに紙一重の戦いだったということだ。ボール支配率ではベルギーが若干上回ったが、主要な指標では両チームはほぼ互角。勝ち点1の分け合いは至極妥当な決着だった。
試合終了の笛が鳴り響き、両陣営の感情はくっきりと分かれた。
エジプトにとっては、悔しさが募る結果である。長い時間帯にわたりベルギーを圧倒し、歴史的勝利が目前だっただけに、ハニーの不運なオウンゴールという結末はなおさら受け入れがたい。複数の大会をまたいで待ち望むW杯初勝利は、今回もまたお預けとなり、試合後の最も際立ったストーリーラインとして語られることになった 。
ベルギーの感想は、安堵と、一人のスーパーサブがもたらした衝撃に集約された。チーム全体のパフォーマンスがいまひとつ精彩を欠く中、試合の流れを一瞬で変えたルカクの能力だけが、初戦黒星を回避した決定的要因として称賛されている。ルディ・ガルシア監督の交代策は見事に的中したが、組織的な守備を打ち破るチームとしての課題をあらわにした試合でもあった 。
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