ただしカンヌではスタンディングオベーション自体が珍しくない。5分という長さは好意的な反応ではあるものの、歴史的な“熱狂”レベルではないとされる。
『Full Phil』の中心にあるのは、一見シンプルだが次第に奇妙になっていく父娘の物語だ。
物語の主人公は、アメリカの富豪実業家 フィリップ・ドゥーム。疎遠になっていた娘 マドレーヌとの関係を修復するため、パリ旅行に出かける。豪華ホテルのスイートでの滞在は順調に見えるが、次第に状況は奇妙な方向へと転がっていく。
彼らの計画は、
といった要素によって次々とかき乱されていく。こうした突飛な展開は、デュピュー監督の得意とする シュールで不条理なコメディの典型的なスタイルだ。
本作はデュピュー作品の中でも特に英語圏のスターがそろった作品として注目されている。
主なキャストは次の通り。
カンヌのレッドカーペットにもスチュワートやハレルソンらが登場し、プレミアは大きな注目を集めた。
劇場内の観客の反応は良かったものの、初期レビューはやや分かれている。
フランス紙 Le Monde は、父娘の再会が次第に破壊的な対立へと発展する物語として、本作を一種の「大虐殺ゲーム」のような展開と表現している。
一方で別のレビューでは、デュピューの特徴である 意図的なナンセンスや突飛な構成が強調されており、観客によって評価が割れる作品になる可能性が指摘されている。
実際、彼の作品はカルト的な支持を集める一方で、従来型のストーリーを求める観客には理解しづらいとされることも多い。
カンヌ映画祭では、上映後のスタンディングオベーションの長さがしばしば話題になる。しかし、その時間は必ずしも作品評価の決定的な指標ではない。
ちなみに、カンヌ史上最長とされる拍手は 『パンズ・ラビリンス』の約22分。ほかにも15分以上続いた例はいくつもある。
この基準で見ると、『Full Phil』の5分間の拍手は **「歓迎されたが記録級ではない」**位置づけと言える。
結果として『Full Phil』は、
という、いかにもデュピュー作品らしいスタートを切った。
スター俳優を揃えた英語作品でありながら、内容はあくまで シュールで風変わりなコメディ。カンヌのミッドナイト枠にふさわしい“話題作”として、今後の公開でどのように受け止められるのか注目されている。