市場心理をさらに冷やした出来事の一つが、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所付近でのドローン攻撃です。
当局によると、攻撃により発電所の外周付近で発電機が燃える火災が発生しました。ただしけが人や放射線漏れはなく、原子力安全システムへの影響もなかったとされています。
それでも、この事件は地域の安全保障状況が不安定であることを改めて示す形となりました。特にイランを巡る緊張や、世界のエネルギー輸送の要衝である湾岸地域の安全性への懸念が、市場の警戒感を強めました。
エネルギー市場もユーロ安の一因です。
湾岸地域の緊張はしばしば原油価格を押し上げます。そして欧州は、石油や液化天然ガス(LNG)を多く輸入に頼るため、エネルギー価格の上昇の影響を受けやすい経済圏です。
燃料コストが上がると、
という二つの問題が同時に起こる可能性があります。こうした「スタグフレーション懸念」はユーロ圏の経済見通しを悪化させ、通貨ユーロにとってはマイナス材料になります。
一方、米国はエネルギー自給度が比較的高いため、原油高の影響は欧州ほど大きくないと見られています。
金利の見通しも重要なポイントです。
市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを長く維持する、あるいは追加利上げの可能性もあるとの見方が強まりました。
一般的に、金利が高い通貨は投資収益が高くなるため、資金が集まりやすくなります。そのため米国の金利見通しが上昇すると、ドルが買われやすくなります。
ユーロ/ドルの動きを説明するうえで、米欧の政策金利差は特に重要です。
最近の推計では
とされ、約160ベーシスポイント(1.6%)の差があります。
この差は、投資家がユーロ建て資産よりも米国債やドル建て金融商品を選びやすくするため、ユーロ安・ドル高の圧力となります。
為替市場では、チャート上の重要な価格帯も売買の判断材料になります。
アナリストは、EUR/USDの1.1650〜1.1620ドル付近を重要なサポート(下値支持)として注視していました。
実際に1.165ドルを割り込んだことで、テクニカル指標は下落圧力の強まりを示唆。サポートを維持できない場合、さらに下落が加速する可能性も指摘されています。
ユーロ/ドルの短期的な方向性は、主に次の要素に左右されると考えられます。
もし地政学リスクが高止まりし、FRBがECBよりも高金利を維持する状況が続けば、ドルは引き続き支えられ、ユーロには下押し圧力が残る可能性があります。
今回のユーロ下落は、単一のニュースではなく、地政学・エネルギー・金融政策の3つの要因が重なった結果でした。
湾岸地域の緊張とバラカ原発付近のドローン攻撃がリスク回避の動きを強め、原油高が欧州経済への懸念を高め、さらにFRBとECBの金利差がドル優位を強めました。
これらの要因が同時に働いたことで、EUR/USDは6週間ぶりの安値圏まで押し下げられました。