1. ブランド認知を伴わないプレミアム価格戦略
Nioはメルセデス・ベンツ、BMW、アウディに対抗する高級EVブランドを標榜するが、それらのブランドが何十年もかけて築いたブランド資産を持たない。急成長するドイツのBEV市場で、消費者は確立されたプレミアムブランドか、手頃な価格の中国ブランド(BYDやXpeng)を選んでいる 。
2. バッテリー交換ステーションの新設がストップ
Nioの最大の差別化要因である「バッテリー・アズ・ア・サービス(BaaS)」と急速交換の利便性は、十分なインフラ網があって初めて機能する。2026年5月、Nioは欧州の顧客に対し、少なくとも2027年後半まで新たな交換ステーションを建設しないと通知した 。交換網の拡大が見込めない中、Nio車を購入する価値は大きく損なわれる。
3. 2027年後半まで新型車・大幅改良なし
同じ顧客向けイベントで、Nioは2027年後半まで欧州向けの新モデルや大幅な改良を投入しないと説明した 。BYDやXpengがモデルを続々と投入・刷新する中、Nioのラインナップは陳腐化する一方だ。
4. 店舗閉鎖が示す「撤退」のシグナル
Nioは2026年7月20日、旗艦ショールーム「Nio House Hamburg」を閉鎖。欧州での旗艦店閉鎖は初めてで、その後ドイツの別の拠点も静かに閉鎖された 。これらはディーラーや個人購入者に対し、「このブランドに長期的に投資するのはリスクが高い」というシグナルを送っている。
5. 業界専門家が指摘する戦略的欠陥
アナリストは、知名度の低いブランドには高すぎる価格設定、BYDの攻勢的なマーケティングに比べた宣伝費不足、そして密度の高いインフラが先行しないと成立しないバッテリー交換モデル(鶏が先か、卵が先かの問題)を、Nioの欧州戦略の根本的な欠陥として挙げている 。
Nioの広報担当者は2026年8月11日、サウスチャイナ・モーニング・ポストに対して**「Nioは欧州から撤退する計画は一切ない」**と述べた。同社は店舗閉鎖を「ルーティンなポートフォリオ管理」と説明し、長期的なコミットメントを強調した 。2026年1月にも「欧州での事業運営を前進させ続ける」と表明し
、6月にはノルウェー法人が同社の姿勢を擁護する声明を出している
。
しかし現地の実情はまったく異なる。登録台数はゼロに近づき、店舗は閉鎖され、交換ステーションと新型車の投入は2027年まで凍結され、低価格を謳ったFireflyブランドも買い手を獲得できていない。ファウンダー兼CEOの李斌(William Li)自身、2026年5月に海外展開を減速させ、投資対効果をより慎重に評価すると認めている 。
Nioの欧州での夢は、今のところガス欠状態で立ち往生していると言わざるを得ない。