この背景には、単純な需要だけでなく、メーカーの出荷戦略や価格動向など複数の要因がある。
Q1の成長を最も押し上げたのは、メーカーや流通が在庫を早めに積み上げたことだった。
DRAMやNANDといったスマートフォン用メモリの価格上昇が予想されていたため、メーカーは端末価格が上がる前に小売チャネルへ出荷を前倒しした。
市場統計では、販売店への出荷(セルイン)も出荷台数としてカウントされるため、実際の消費者販売よりも出荷タイミングが市場成長として表れやすい。
さらにメーカー各社は、製品ラインを整理し、ストレージ容量の少ないモデルを増やすことでコストを抑え、価格を維持する戦略も取った。
価格に敏感な市場が多い中南米では、このような調整が出荷維持に大きく影響したとみられる。
メーカー別では、サムスンが明確なトップだった。
これは2023年初頭以来、同地域で最も高い四半期シェアとなる。
エントリー向けのGalaxy Aシリーズからプレミアムモデルまで幅広いラインアップを持つことが、中南米の多様な価格帯の需要を取り込む要因となった。
サムスンに続く主要メーカーも好調だった。
シャオミは約**600万台(シェア17%)**を出荷し2位を維持。中米やペルーなどでの販売拡大が成長を支えた。
アップルも存在感を強めており、iPhone出荷は前年比31%増。特にメキシコ市場の需要が伸びたことが大きな要因とされる。
さらに、中国系ブランドのHONORなども中南米で積極的に市場拡大を進めており、新興ブランドの競争が強まっている。
価格帯別に見ると、需要の強さは均一ではない。
Omdiaによると、低所得層ではスマートフォン価格の上昇が購入の障壁になりやすく、低価格モデルほど需要の影響を受けやすい状況が見られる。
この「プレミアムは強く、格安は苦戦」という構図は、新興市場全体で広がりつつあるトレンドでもある。
ただし、アナリストはこの成長が長く続くとは限らないと見ている。
最大のリスクは、メモリ価格の上昇だ。DRAMやNANDの供給制約によってスマートフォンの製造コストは上昇しており、メーカーは最終的にそのコストを端末価格へ転嫁する可能性がある。
在庫の前倒し分が消化されると、メーカーはより高い価格で新モデルを出荷せざるを得なくなる。価格に敏感な中南米市場では、これが需要を冷やす可能性がある。
つまり、2026年Q1の好調な数字は、実際の需要の急増というより「出荷タイミングの効果」も含んだ結果といえる。
それでも地域全体の基調は悪くない。2025年の中南米スマートフォン出荷は年間1億4,050万台で過去最高を記録した。
今後の市場の行方は、
といった要因に大きく左右される。
スマートフォン市場では、出荷の増減が必ずしも需要そのものを示すわけではない。2026年Q1の中南米市場は、その典型的な例と言えるだろう。