市場データには、投資マネーの勢いが鈍っている兆候がいくつか表れている。
・米COMEX(ニューヨーク商品取引所)の金先物の建玉と取引量が低水準
・ヘッジファンドなど運用資金のネットポジション縮小
・金連動ETFへの資金流入が限定的
こうした指標は、機関投資家や投機資金が金市場から一時的に距離を置いていることを示しており、JPMorganは従来の価格想定が短期的にはやや強気すぎたと判断した。
実際、他の金融機関も同様の理由で短期的な金価格予想を引き下げているケースがある。
2026年に入り、金価格は年初の高値から調整した。その背景には、金にとって逆風となる複数のマクロ要因がある。
実質金利の上昇
金は利息を生まない資産のため、実質利回りが上昇すると保有の魅力が低下する。債券利回りが上昇すると、金を持つ「機会コスト」が高くなるためだ。
ドル高の進行
金は通常米ドル建てで取引される。ドルが強くなると、他通貨の投資家にとって金が割高になるため、需要が弱まりやすい。
FRBの高金利長期化観測
市場では米連邦準備制度(FRB)が政策金利を当初想定より長く高水準で維持する可能性が意識されている。この見通しはドル高や債券利回り上昇につながり、金価格の重しになりやすい。
これらの要因が重なり、金は年初の高値から一時的に勢いを失ったとみられている。
短期見通しを下げたにもかかわらず、JPMorganは中長期的な金市場の上昇トレンドは続くと考えている。
その最大の理由が、中央銀行による継続的な金購入だ。
世界各国の中央銀行は近年、外貨準備の一部を金へと移す動きを強めている。地政学リスクや通貨体制の不確実性を背景に、金を戦略的な準備資産として保有する傾向が強まっているためだ。
JPMorganの調査でも、こうした外貨準備の金への分散は今後も続く可能性が高いとされている。
つまり現在の価格調整は、長期的な上昇トレンドが終わったというより、市場の過熱を調整する一時的な局面と位置づけられている。
複数のアナリストは、金価格が2026年後半にかけて再び上昇する可能性を指摘している。
回復の鍵になるとみられる要因は次の通り。
・中央銀行による金準備の継続的な購入
・ドル依存からの外貨準備分散
・欧米投資家の金投資配分の回復
もし投資資金の流入が再び強まり、金利環境がやや緩和すれば、金価格は再び上昇トレンドに戻る可能性がある。
JPMorganは金だけでなく、銀にも比較的強気な見方を示している。
同行の予測では、銀の2026年平均価格は1オンス約81ドルになる可能性がある。
背景には
・供給の伸びが限られていること
・産業需要と投資需要の強さ
といった要因がある。分析では、銀市場は単なる投機的な急騰ではなく、より高い価格水準を形成する構造的な段階に入りつつあると指摘されている。
JPMorganが2026年の金価格予想を引き下げたのは、投資需要の弱さや金利上昇、ドル高といった短期的な市場環境の変化が主な理由だ。
しかし、中央銀行の購入拡大や外貨準備の金への分散といった構造的な需要は依然として強い。そのため同行は、今回の調整を長期トレンドの終わりではなく、一時的な調整局面とみている。
つまり金市場は短期的には揺れ動く可能性があるものの、長期的な上昇ストーリーはまだ続いている、というのがJPMorganの基本的な見方だ。