今回の98万件超えは単一の要因ではなく、複数の力が同時に作用した結果です。
スポットイーサリアムETFは、2026年8月3日から7日までの週に純流入額2億4500万ドルを記録し、5週連続のプラスフローとなりました 。SantimentはETF需要の回復をアクティブアドレス増加の主要な触媒と位置づけ、これは「全く新しいユーザーが市場に参入したというよりも、既存のウォレットが再稼働し、資本を回転させ、再びレールを試している」状態だと分析しています 。
Robinhood Chainによるイーサリアム決済の活動が、ETHのガス需要とアプリトラフィックに新たな高ボリュームのユースケースを追加しました 。同時に、ArbitrumやOptimismといったL2ネットワークの利用拡大が、決済トランザクションをイーサリアムメインネットに還流させ、アドレス数押し上げに貢献しています 。低いガス代がこの拡大を支え、ユーザーのコスト負担を軽減しているのも重要な要素です 。
分散型取引所(DEX)の手数料収入は8月上旬に急増しました。8月4日にはFluid DEXの手数料が24時間で101.32%急騰したほか、Uniswap V3は54.53%、Uniswap V4は37.02%、Curve DEXは51.62%上昇しました 。Santimentは今回のアドレス急増の一因として、DeFi、NFT、DEXに加えて、リキッドステーキングやリストレーキングへの関心の高まりを挙げています 。
ステーブルコインの送金と現実資産(RWA)のトークン化も、継続的に注目をイーサリアムに集めています。2026年第2四半期時点で、イーサリアム上には172億ドル相当のRWAが存在します 。同チェーンは依然としてドル流動性の主要な決済レイヤーであり、米国の市場構造整備の進展が、規制されたオンチェーン金融に関心を持つ機関投資家を引きつけています 。
2026年8月11日、あるクジラ(匿名の大口保有者)が取引所Geminiからさらに**9,000 ETH(約1690万ドル相当)**を引き出しました。これは先月から続く累計約12万1000ETH(総額2億2700万ドル)の買い集めの一環です 。CryptoQuantのデータは、2026年を通じて大口保有者(10K-100K ETHコホート)が個人投資家からの売りを吸収している実態を示しており、2025年半ばから2026年半ばにかけてこのコホートは560万ETHを追加購入した一方、1K-10K ETHコホートの保有量は1月の1560万ETHから約1290万ETHに減少しています 。
オンチェーン活動が爆発的に増加しているにもかかわらず、ETHは約1870ドルのベアマーケットレンジに留まっています。この乖離には複数の構造的要因があります。
L2への移行により、現在はほとんどの取引手数料がメインネットではなくL2で支払われています。これにより、ETHの「超音速マネー」(バーンによるデジタルゴールド)というナラティブは著しく弱まり、価格回復を鈍らせています 。市場は、価値モデルが第一のモデル(手数料焼却によるデジタルゴールド)から第二のモデル(利回りを生む準備資産)へと移行する過程にあり、その過渡期にあると分析されています 。
イーサリアムのアプリケーションレイヤーは2026年第2四半期に約17億9000万ドルの手数料を生み出しましたが、ETHメインネットが捕捉したのはその**わずか4.9%(約8840万ドル)**に過ぎません 。活動がロールアップに移行するにつれて、メインネットが可能にする経済活動から得られる価値の取り分は減少しています。オンチェーンアナリストのTanaka氏は、「ネットワーク活動は本物だが、ETHトークンへの価値蓄積が追いついていない」と分析しています 。
イーサリアムのステーキング利回りと従来の債券市場の利回りとの差が縮小したことで、ステーキングの相対的な魅力が低下し、売り圧力の一因となっています 。このポジション調整が、8月初旬に連鎖的なロング(買い)ポジションの強制決済(ロングリクイデーション)を引き起こしました 。
アナリストは、8月の取引ウィンドウに特有の季節的な低流動性と、信用環境の引き締まりが、ポジティブなオンチェーンシグナルが価格に反映されるのを妨げる逆風になっていると指摘しています 。TradingKeyの分析は、この日中の下落が「信用環境の引き締まりと季節的な流動性の空白との複雑な相互作用」を反映したものだと述べています 。
CryptoQuantのレポートによると、米国投資家の関心が持続的に低いことが資金調達と市場需要を制限しており、採用シグナルが強いにもかかわらず、短期的な価格上昇は限定的である可能性を示唆しています 。
今回の乖離は初めてではありません。2025年後半にも、1日あたり取引量が210万件に達した一方で、ETH価格は4500ドルから2900ドルに下落するという同様のパターンが見られました 。今回の(98万9500件のアドレス対約1870ドルの価格)は、同じダイナミクスが強化されたバージョンです。すなわち、ネットワーク利用が価格変動を上回っており、これはしばしば投機的需要ではなく蓄積(アキュムレーション)を示唆します 。
Glassnodeのデータによると、アクティブアドレスの30日移動平均は2026年7月も約45万件を維持しており、これは2025年8月から9月(ETHがサイクル高値の4500ドル以上で取引されていた時期)と同じ水準です 。つまり、ネットワーク利用は価格から切り離され、活動は強気相場(ブルマーケット)の水準を維持している一方で、ソーシャルでの関心(話題性)は急落しているのです 。
Solanaはアクティブアドレス数で異なるスケールで動作しています。通常、1日あたり150万~300万件(典型的には約200万件)のアクティブアドレスを記録し、6月下旬のある日には1億2700万件のトランザクションを処理しました。これはイーサリアムメインネットの約280万件/日を大きく上回ります 。Solanaは2026年3月に初めて1日あたりアクティブアドレス数でイーサリアム(メインネットのみ)を上回り、420万件対380万件を記録しました 。4月の週間DEX取引量でも、Solanaは114億9000万ドルと、イーサリアム(メインネットのみ)の76億2000万ドルを上回りました(約51%のリード)。
ただし、より意味のある比較はイーサリアムメインネット+L2エコシステム全体です。L2ネットワークを含めると、イーサリアムのエコシステムは1日あたり1200万件以上のアクティブアドレスを記録し、全体的なネットワークリーダーシップを維持しています 。2026年第2四半期時点で、ロールアップ群は毎秒1270件のユーザーオペレーションを処理していました 。
アクティブアドレス数の指標では、CardanoはイーサリアムやSolanaにとって競争上の脅威にはなっていません。1日あたりのアクティブアドレス数は9,000~16,000件で、2024年の約13万5000件から大幅に減少しています 。時価総額も約62.9億ドルと、イーサリアム(約2249億5000万ドル)やSolana(約424億ドル)に大きく水をあけられています 。
イーサリアムのオンチェーン活動は強気相場(ブルマーケット)並みの水準にある一方、価格は弱気相場(ベアマーケット)のレンジに留まっています。この構造的な乖離は、L2への価値移転、バーンメカニズムの機能低下、マクロ経済的な逆風によって生み出されています。
持続的なアドレス数の増加が最終的に価格を押し上げるかどうかは、こうした構造的なオフセット要因が反転するかどうかにかかっています。注目すべきシグナルとしては、(1) ETFへの資金流入が継続するか、(2) 今後のアップグレードの影響、(3) クジラの蓄積が価格サポートに転化するか——の3点です。
現時点では、イーサリアムのネットワークはこれまで以上に活発ですが、トークンであるETHはその価値をまだ十分に捕捉できていない、と言えるでしょう。