さらにNvidiaは投資家への還元策も打ち出した。
これらは、同社が今後もAI半導体需要の強さを見込んでいることを示すシグナルとして受け止められた。
AI関連ハードウェア市場では、Nvidiaの業績は“業界の温度計”のように見られることが多い。そのため、この決算は半導体セクター全体の期待を押し上げる結果となった。
もう一つの大きな材料が、サムスン電子の労使交渉の進展だった。
同社は労働組合と賃金・ボーナスについて暫定合意に達し、数万人規模の従業員が参加予定だったストライキが停止された。
サムスン電子は世界最大級のメモリ半導体メーカーであり、もし長期ストが実施されていれば、DRAMやHBMなどの供給に影響が出る可能性があった。
AIサーバーでは大量のメモリが必要になるため、供給障害は世界の半導体市場に波及するリスクがあった。今回の合意によってその懸念が後退し、投資家心理が大きく改善した。
この2つのニュースを受け、アジア市場では半導体関連株が主導する形で株価が急伸した。
韓国では主要株価指数KOSPIが8%以上上昇。指数の大きな比重を占めるサムスン電子とSKハイニックスの株価が大幅高となった。
さらにAI半導体のサプライチェーンを担う企業にも買いが広がり、台湾市場でも半導体関連株が上昇。アジア太平洋(日本除く)の株価指数であるMSCIアジア太平洋指数も約2〜3%上昇し、数日続いた下げを取り戻した。
この流れはウォール街にも波及した。
Nvidiaの決算は、AIインフラ投資が依然として拡大していることを示す重要な材料となり、米国株式市場でもハイテク株への買い戻しを促した。
クラウド企業やデータセンター運営会社がAI計算能力の拡張に巨額投資を続けているとの見方が強まり、半導体セクター全体への期待が高まった形だ。
もっとも、市場の楽観ムードは完全ではない。
最近は国債利回りが数カ月ぶりの高水準に接近しており、インフレ懸念や中東情勢などが金利上昇圧力を生んでいる。金利が高い状態は、将来利益の価値を割り引く形になるため、一般的に成長株には逆風となる。
つまり今回の株価上昇は、世界経済全体の環境が改善したというより、企業個別の好材料(ミクロ要因)がマクロ不安を上回った結果と見ることができる。
今回の市場反応が示しているのは、世界の株式市場において半導体産業がAI投資の中心にあるという現実だ。
Nvidiaの決算はAI計算インフラへの需要が極めて強いことを示し、同時にサムスンやSKハイニックスのようなメモリ企業の安定供給がその成長を支えている。
金利や地政学リスクという不確実性は残るものの、市場が受け取ったメッセージはシンプルだ。
AI向け半導体サイクルは、まだ強い勢いの中にある。