NvidiaがPC向けスーパーチップ「RTX Spark」を発表。
台北で開幕したComputexにおいて、Nvidiaのジェンスン・フアンCEOは同社初のコンシューマ向けシステム・オン・チップ「RTX Spark」(開発コードネーム:N1X)を披露した。このチップは、MediaTekと共同設計した20コアのArmベースCPUと、デスクトップ版GeForce RTX 5070に相当する6,144基のCUDAコアを搭載したBlackwellアーキテクチャGPUを1つに統合している。TSMCの3ナノメートルプロセスで製造され、2026年後半からMicrosoft Surface、Dell XPS、HP EliteBook、ASUS、Lenovo、MSIといった主要メーカーのプレミアムAIノートPCに搭載される予定だ。これはQualcomm、Intel、AMD、AppleのMシリーズプロセッサに対するNvidiaからの直接挑戦であり、データセンター向けGPUという従来の主力事業を大きく超える市場機会(TAM)の拡大を意味する。この発表を受け、月曜日の米国市場でNvidia株は6.3%高、Arm Holdings株は15.6%高と急騰した。
火曜日の朝方には、Marvell TechnologyやBroadcomに大口の買いが入り、半導体セクターの熱狂は続いた。ただし米国株先物は一部で利益確定の動きも見られ、やや下落して推移した。この上昇相場の特徴は、テクノロジーセクター主導である点だ。AIへの熱気がテクノロジー株全体を押し上げた一方、欧州株も上昇し、戦争リスクで高騰していた原油価格は反落、債券利回りも低下している。
実はこの日、上昇ムードに水を差しかねない重大な地政学的懸念が存在した。イランが、レバノンにおけるイスラエルの軍事行動に抗議する形で、米国との間接協議を停止したのだ。このニュースを受け、月曜日には原油価格が急騰した。チャールズ・シュワブはこの状況を「テック主導の上昇が厄介な戦争ニュースを力でねじ伏せた格好」であり、「原油高と半導体強気の『壮大な綱引き』だ」と評した。
火曜日には原油価格が反落し、株式市場への圧力はいくぶん緩和された。しかしリスクが解消したわけではない。シュワブはまた、イランがホルムズ海峡の完全封鎖を計画しているとの表明が、今後数日の取引を左右する可能性があるとも指摘している。今のところ、AIへの熱狂がこの綱引きを制しているが、地政学的火種が消えたわけでは決してない。
実はこの急騰の数週間前から、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーはともに「市場の狭い範囲への極端な集中は危険だ」との明確な警告を公表していた。史上最高値を演出したAI銘柄そのものが、同時にこの市場最大の弱点でもあるというパラドックスだ。
ゴールドマン・サックスは5月19日付のグローバル戦略ノートで、2026年年間騰落率について、S&P500指数が年初来約10%上昇する一方、その85%を「テクノロジー、メディア、通信(TMT)」セクターが稼ぎ出していると指摘。投資家が集中リスクを過小評価しているとし、このレベルの偏りは市場全体の弱さを覆い隠してしまうと警告した。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントの市場リサーチ・戦略責任者ダニエル・スケリー氏は5月29日、さらに踏み込んだ。同氏はAIインフラ関連銘柄について、投資判断を「買い」から「ホールド(保有継続)」に切り替えるよう助言し、AI投資テーマの過熱は「1990年代半ばに似た構図」で冷却する可能性があると警告した。同氏が特に懸念したのは、AI支出の最前線にある半導体、ITハードウェア、電力セクターへの資金の集中である。足元の上昇率があまりに急ピッチであったため、ポジションを買い増すより、現状を維持する方が賢明だとスケリー氏は記している。
ゴールドマン・サックスはまた、5月6日付の投資家向けノートでも、高い集中度と限られた銘柄群による相場けん引が「業績への失望に対する感応度の高まりと、無秩序な市場調整の発生確率増大につながる」と認めていた。同ノートでは、「Magnificent 7(超大型ハイテク7銘柄)」が2026年にすでに市場全体をアンダーパフォームし始めている事実も強調されている。
ここに構造面の懸念を重ねたのがS&Pグローバルだ。同社が5月4日に公表したリポートは、ヘッジファンドのプライムブローカー融資が現在、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、バークレイズ、BNPパリバのわずか4行に集中し、レバレッジ倍率が2008年の世界金融危機前以来の水準に達していると警告した。業界全体のグロスレバレッジは純資産価値(NAV)の約8倍に達し、10年前の5倍から大幅に上昇している。
これら一連の警告が描き出すのは、AIの勢いという追い風に乗ってはいるが、極めて狭く、かつ過剰なレバレッジに支えられた脆弱な土台の上に立つ市場の姿だ。6月1日から2日にかけての上昇は本物であり強力ではあったが、それは各金融機関がまさにいま警告を発したばかりのリスクを一層増幅させる結果にもなっている。
AI関連の暗号資産(仮想通貨)の値動きと、ビットコインおよびイーサリアム現物ETFからの資金流出が対照的ではないかという問いに対して、残念ながら2026年6月1日〜2日時点の具体的データは入手できた情報源からは確認できなかった。この点については、引き続きデータの空白が残っている。2026年春を通じて見られた大局的なパターンとしては、Render(RNDR)、Bittensor(TAO)、Near Protocol(NEAR)といったAIテーマの暗号資産が、ハイテク・AI関連のニュースに同調して断続的に上昇する一方、米国のビットコインおよびイーサリアム現物ETFからは、地政学的な不透明感と金利上昇を背景に、機関投資家の資金流出が続くという傾向が観察されていた。ただし、この大局観を6月1日〜2日のデータで裏付けることは今回の情報源からは不可能である。
総じて今回の相場上昇は、AIがけん引し、ごく一部の銘柄に集中し、勢い任せのモメンタムで押し上げられたものだ。地政学リスクを一時的に押しのけてはいるが、ゴールドマンとモルガン・スタンレーが公に「脆弱」と指摘した集中構造の上に座っている。AnthropicのIPO申請とNvidiaのPCチップという2大カタリストは、本物の重要ニュースであり、今後数カ月の市場の物語を形作っていくだろう。しかし金融機関からの警告は、決して観念的なものではない。一握りの銘柄が市場全体を背負い、その背後にあるレバレッジが歴史的な高水準にあるというデータに根差した具体的な警鐘である。
「Magnificent 7」のいずれかが業績で失望を誘うか、AIセンチメントに変化が生じれば、それはまさにゴールドマンが「発生確率が高まった」と述べた無秩序な調整を引き起こす引き金になりうる。現在の市場は「AIは完全無欠」という前提で値付けされている。問題は、その「完全無欠」がいつまで持つかだ。