今回の決算で最も分かりやすい追い風は、価格だった。Business Standardは、アラムコの証券取引所向け開示を引用し、同社が四半期中に原油、精製燃料、化学品の価格上昇から恩恵を受けたと報じている。Khaleej Timesも、前年同期比での増益は原油販売の増加と価格上昇が押し上げたと伝えた。
ここで重要なのは、上振れが単なる「原油高」だけではなかったことだ。精製燃料や化学品の価格も寄与し、アラムコの炭化水素バリューチェーンの複数部分で収益を支えた。売上高は8.8%増だった一方、営業利益は16.3%増の2,225億4,000万サウジリヤルとなり、売上の伸びを上回るペースで営業利益が拡大した。
利益の上振れは明確だったが、それがそのままフリーキャッシュフローの改善につながったわけではない。アラムコの営業活動によるキャッシュフローは307億ドルで、前年同期の317億ドルを下回った。フリーキャッシュフローも186億ドルと、前年同期の192億ドルから減少した。
会社側は、フリーキャッシュフローが158億ドルの運転資本増加の影響を受けたと説明している。この点は投資家にとって見逃せない。1〜3月期は商品価格への利益感応度の高さを示した一方で、現金創出力は利益ほど改善していなかったからだ。
同社はこの四半期に121億ドルの設備投資を行い、さらに第2四半期に支払う219億ドルの基本配当も発表している。利益、投資、配当、キャッシュフローのバランスは、今後も注目点になりそうだ。
今後も同じような好調が続くかどうかは、原油と川下製品の価格環境が支えられるかにかかっている。ただし、今回の利益を押し上げた原油、精製燃料、化学品の価格は、いずれも市況性が強く、反転する可能性もある。
原油価格の見通しは大きく割れている。Business Standardが取り上げたMirae Asset Sharekhanの見通しでは、イランやホルムズ海峡周辺の混乱が長引き供給が逼迫する場合、2026年第4四半期のブレント原油は90ドルになると予想されている。より大きな供給ショックが起きれば、上振れリスクもあるという見方だ。
一方、J.P. Morgan Global Researchは、需給の基調が弱く、長期的な供給途絶は起こりにくいとして、2026年のブレント原油平均価格を1バレル約60ドルと見込んでいる。これは、アラムコの第1四半期決算を支えた価格環境が続くとは限らない、という慎重なシナリオだ。
需要面でもシグナルは混在している。OPECは、中東で続く戦争が消費に与える影響を理由に、2026年第2四半期の世界石油需要見通しを日量1億505万バレル程度へ引き下げた。従来見通しは日量1億557万バレルだった。一方で、2026年通年の需要増加見通しは日量約140万バレルで据え置いている。
サウジアラムコの2026年1〜3月期の利益上振れは本物だった。原油、精製燃料、化学品の価格上昇が利益を押し上げ、予想を上回る決算につながった。
ただし、フリーキャッシュフローは前年同期比で減少しており、2026年の原油価格見通しも、ブレント原油90ドルの供給混乱シナリオから、平均60ドル前後という慎重見通しまで幅がある。
実務的な見方をすれば、アラムコは原油市場と下流製品市場が堅調であれば、引き続き強い利益を出せる可能性がある。しかし、1〜3月期のような上振れを繰り返せるかどうかは、価格、マージン、運転資本が同時に会社側に有利に動くかに左右される。