ETH(イーサリアム)の2600ドル突破は、ETH固有の新たな強気相場入りを決定づける動きというより、暗号資産市場全体の反発の中で起きたショートスクイーズとみるのが妥当です。9月18日、ETHは2436ドルから2622ドルの範囲で取引され、金曜夜には約2616ドルと、24時間で6.7%高でした。
7
この上昇が続く可能性はあります。ただし持続性を左右するのは、レバレッジをかけた売りポジションの強制決済による機械的な買いを、裁量的な現物買いが引き継げるかどうかです。
急騰を直接後押ししたもの
直近で上値を抑えていた2600ドル近辺を価格が上抜けると、弱気のデリバティブ取引が相次いで決済に追い込まれました。報道ベースでは、24時間でETHのショートポジションが約8500万ドル、暗号資産市場全体では約4億7000万ドル清算されました。
7
清算は、単にトレーダーが見方を変えて売買することではありません。レバレッジを用いたショートが必要証拠金を維持できなくなると、取引所がポジションを強制的に閉じます。ショートを閉じるにはETH、または相当する契約を買い戻す必要があり、その買いが価格を押し上げ、さらにショート清算を誘発する循環が生じ得ます。
今回の上昇スピードは、この仕組みで説明しやすい一方、清算額だけで継続的な投資家需要を判断することはできません。清算されやすいショートが一巡すれば、その買い圧力は弱まるためです。
注目水準は2600ドル
当日の高値は2622ドルで、2600ドルをわずかに上回る水準にとどまりました。日中の安値は2436ドルであり、この水準は「突破を祝う地点」よりも、むしろ上抜けが定着するかを確認する地点といえます。
7
より強いテクニカルな展開としては、次の条件が意識されます。
- 先物市場の過熱が落ち着いた後も2600ドル超を維持すること
- すぐに反落せず、同水準近辺で値固めすること
- 上側から2600ドルを試す局面で、現物の買い需要が続くこと
速やかに2600ドルを下回る場合でも、暗号資産市場全体の回復シナリオまで否定するものではありません。ただ、金曜の上昇が本格的なブレイクアウトというより、デリバティブのポジション調整に主導された可能性を強めます。
供給の引き締まりは追い風だが、単独では材料にならない
ETHの市場構造は引き締まっています。9月8日時点の取引所保有残高は約1488万ETHと複数年ぶりの低水準で、約4310万ETH、供給量の35.91%がステーキングされていると報じられました。
17
ステーキング中のETHや取引所から移動したETHは、通常、すぐには売買に回りにくくなります。市場で即座に取引される供給量が少なければ、需要が戻った際に価格は需給の影響を受けやすくなります。
ただし、供給減少と新規の買い需要は別の話です。ステーキングの増加や取引所残高の低下は上昇を増幅し得ますが、それ自体が継続的な買い手の流入を意味するわけではありません。
ETF資金フローが示す短期的な矛盾
強気シナリオにとって最も明確な反対材料は、米国の現物ETH ETFの直近フローです。9月15日に1億4147万ドル、16日に2億2411万ドルの純流出が報告され、2日間の合計は3億6558万ドルに達しました。
34 さらに9月17日は約3930万ドルの純流出との報告もあり、3営業日合計では約4億500万ドルとなります。
42
ETFフローは機関投資家や現物需要の全てを示すものではなく、日々の資金流出入は反転し得ます。それでも、上昇の持続性を測る上では、ショート清算より重要なデータです。ETFの設定・解約は投資家の裁量による資金移動であるのに対し、ショートカバーは一時的な市場メカニズムだからです。
マクロ・政策環境はなお一方向ではない
今回の動きの前には、暗号資産市場の心理を悪化させる材料がありました。米上院は9月15日、CLARITY法案の審議入りに必要な手続き採決で49対50となり、必要な60票に届きませんでした。
36 その後の市場安定化については、米連邦準備制度理事会(FRB)の0.25%ポイント利上げ後にリスク選好が戻ったことや、暗号資産市場構造を巡る政策面の進展が背景にあるとの見方も報じられています。
8
9
重要なのは、政策環境が一様に追い風へ転じたわけではないことです。市場参加者は、規制面や金利面の悪材料と、制度設計を巡る議論が続いているという前向きな兆しを同時に織り込んでいます。この組み合わせは、上下いずれの方向にも値動きを増幅し得ます。
今回の上昇をどう評価するか
現時点でのバランスの取れた評価は、市場構造は前向きだが、需要はまだ確認されていないです。
- 強気材料: 取引所にあるETHは少なく、ステーキング比率は高い。加えて、ETHは注目度の高い2600ドル近辺を回復しました。
17
- 警戒材料: 直近の急騰は大規模なショート清算と重なった一方、現物ETH ETFでは目立った資金流出が続いています。
7
34
- 最重要の確認点: 清算主導の買いが平常化した後もETHが2600ドル超で取引を維持し、現物需要が改善するかどうかです。
ショートスクイーズと持続的なトレンドは区別する必要があります。前者は短時間で価格を動かせますが、後者にはレバレッジ解消後も買い増しを続ける投資家が必要です。ETHでは、2600ドルを防衛できるか、取引所残高の低下傾向が続くか、そしてETF資金フローが安定または流入へ転じるかが次の判断材料になります。
本記事は市場分析であり、投資助言ではありません。