ビットコインの8月の急騰は、単一の材料で説明できるものではない。機関投資家の需要回復、財政圧力と希少資産をめぐるマクロ環境、そして上昇に逆らっていたトレーダーの強制的な買い戻しが重なった結果だ。
ビットコインは8月に約25%上昇し、2017年以来最も強い8月となるペースとなった。月間ベースでは2024年11月以来の大幅な上昇で、8月25日には5月中旬以来初めて8万ドルを上回り、約8万1,238ドルまで上昇した。
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ただし、この上昇が長続きするかはまだ証明されていない。ショートスクイーズが一巡し、金利上昇観測によってリスク資産を保有するコストが高まるなかでも、買い手が上昇分を守れるかが次の焦点になる。
主役は現物ビットコインETFへの資金回帰
米国上場の現物ビットコインETFには、8月21日までの5取引日で約19億2,000万ドルの純流入があった。これは2025年10月以来で最も強い週間流入だが、史上最高の週間流入額という意味ではない。Bloombergによると、13本のファンドには8月20日だけで6億630万ドルが流入した。
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ETFの資金フローが重要なのは、現物市場の需要を確認しやすい経路だからだ。5営業日連続の流入が続く一方、ビットコインはこの週に20%超上昇した。デリバティブのポジションだけでなく、現物への買いが上昇を支えた点で、今回の動きには一定の厚みがあった。
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なお、記録となったのはETFの流入額ではなく、ビットコイン価格の週間上昇幅だ。CoinMarketCap Academyがまとめた市場データによると、8月22日までの1週間でビットコインは1万4,264ドル、率にして22.7%上昇し、ドル換算の週間上昇幅として過去最大となった。
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この違いは押さえておきたい。ETFへの19億2,000万ドルは極めて強い数字だが、「過去最大」という記録が該当するのは、必ずしもETFへの資金流入ではなく、ビットコインの週間ドル上昇幅である。
米国債の買い戻しが「希少資産」取引を再燃
上昇を後押ししたもう一つの材料が、米国の財政と債券市場をめぐる不安だった。米財務省は、10~30年の米国債を対象とする一部の買い戻し規模を、1回当たり20億ドルから少なくとも40億ドルへ倍増すると表明した。長期債市場の緊張を和らげる狙いがあったと説明されている。
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この発表は、米国の公的債務残高が40兆ドルを超え、長期の資金調達コストに圧力がかかる局面で行われた。Reutersによると、財務省の発表後、金は3%超、ビットコインは13%上昇した。投資家が、財政悪化によって政府債務やドルへの信認が揺らぐ可能性を改めて意識したためだ。
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もちろん、国債買い戻しがビットコインの上昇全体を機械的に引き起こしたわけではない。むしろ、債務、インフレ、通貨価値の希薄化への懸念が強まると、金やビットコインのような供給に限りのある資産が同時に買われるという、暗号資産市場でおなじみの物語を強めたとみられる。Bloombergによれば、この局面では金とビットコインに連動するファンドに、5取引日で合計70億ドルという過去最高の資金が集まった。
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ショートの清算が上昇速度を押し上げた
現物買いと財務省をめぐる材料でビットコインが目先の抵抗線を突破すると、レバレッジをかけた空売りポジションが不安定になった。価格上昇によって損失が膨らんだショート勢は、ポジションを閉じるためにビットコインを買い戻さざるを得ず、上昇にさらに弾みをつけた。
市場報道では、今回の上昇は一部、ショートスクイーズとして始まったとされる。CoinCodexは、8万1,000ドル突破の局面で、2019年以来最大のショート清算が起きたと報じている。
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ただし、ショートカバーは上昇が急になる理由にはなっても、持続的な資金蓄積と同じではない。清算による買いは一度きりの需要だ。レバレッジをかけた売り手が一掃された後にETFの流入が鈍れば、上昇の勢いを維持するには新たな現物買いが必要になる。
8万1,000~8万1,800ドルが重要なテクニカル試験
8万ドルを超えたビットコインは、重要な上値抵抗帯に差しかかった。ある市場分析では、50週移動平均線は約8万1,081ドル、直近のスイング高値は約8万2,850ドルとされている。また、米国の現物ビットコインETFに入った資金の平均取得コストは、8万~8万2,000ドル付近と推定されている。
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この価格帯が重要なのは、主に二つの理由からだ。
- トレンド確認: 週足で50週移動平均線を明確に上回って定着できれば、以前の下落局面を経て長期トレンドの目安を回復したことになる。
- 売り圧力と支え: 8万~8万2,000ドル付近でETF経由の買いを入れた投資家は、押し目で相場を支える可能性がある一方、このゾーンで何度も上値を抑えられれば売却に動く可能性もある。
したがって、8万1,000ドルを一時的に上回るだけでは十分ではない。このゾーンを上方で受け入れ、週足終値でおおむね8万1,000~8万1,800ドルを上回ったうえで、上からの再テストにも成功すれば、新たな上昇トレンドへ移行した証拠として説得力が増す。反対に、上値を拒まれれば、8月の上昇はより深い調整にさらされやすくなる。
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ウォーシュ議長のタカ派発言が上昇の弱点を露呈
8月末、上昇相場にとって最大の逆風となったのが米連邦準備制度理事会(FRB)だった。ジャクソンホール会議でケビン・ウォーシュ議長は、インフレが2%の目標に戻るとの確信を持てなければ、FRBには「取り組むべき仕事がある」と発言した。FRBが重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数の12カ月上昇率は3.7%だった。
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市場では、9月の利上げ確率が約40%から約60%へ上昇したとReutersが報じた。他の市場報道では55%超とされており、集計時点やデータの違いはあるものの、政策判断が確定したわけではない点には注意が必要だ。
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反応は速かった。ビットコインは取引時間中の高値8万1,000ドル超から3%以上下落し、約7万7,400ドルで推移した。
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利上げ観測が強まると、ドル高や国債利回りの上昇につながりやすい。利息を生まないビットコインのような資産にとっては、相対的な魅力が低下する要因となる。今回の反落は、8月の上昇が金融政策への期待の変化に依然として敏感であることを示した。
新たな強気相場か、それとも強力なベアマーケットラリーか
現時点で確認できるのは力強い回復であって、新たな強気相場のサイクルが確定したわけではない。今後は、8月の上昇率そのものではなく、相場が次の局面でどのように振る舞うかを見極める必要がある。
強気シナリオを裏付けるサイン
- 8万1,000~8万1,800ドルを週足終値で上回り、定着すること。 その後、直近のスイング高値である約8万2,850ドルを突破する。
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- 7万6,000~8万ドルのレンジを終値ベースで維持すること。 特に8万ドルが抵抗線から支持線へ変わる展開が望ましい。
- 米国の現物ビットコインETFへの純流入が続くこと。 19億2,000万ドルの一時的な急増で終わらず、継続的な需要が確認できるかが重要になる。
- 清算が落ち着いた後も現物買いが続くこと。 レバレッジ主導の急騰ではなく、実際の蓄積だと判断しやすくなる。
- 秋にかけて利上げ観測がさらにタカ派方向へ修正されないこと。 金融環境の急激な引き締まりを避けられるかが焦点となる。
ベアマーケットラリーを示すサイン
50週移動平均線の下で何度も上値を抑えられ、7万6,000ドルを持続的に下回る展開になれば、強気の見方は弱まる。そこにETFからの資金流出や国債利回りの上昇が重なれば、8月の上昇は売られ過ぎからの反発に、ショートカバーとマクロ要因が加わったものだという解釈が強まる。
結論は、強気一辺倒でも弱気一辺倒でもない。8月の上昇には機関投資家による実際の支えがあり、価格上昇幅も歴史的に大きかった。しかし、それが新たな相場サイクルになるのは、買い手が7万6,000~8万ドルのレンジを守り、8万1,000~8万1,800ドルの抵抗帯を週足ベースで持続的に上回ってからだ。