XPENGはこの結果を、中国の複雑な都市交通環境で自社システムがより優れている証拠として紹介した。
ただし公開情報では、次のような重要な条件が十分に説明されていない。
・走行ルートの距離と難易度
・交通量や天候
・使用されたソフトウェアの正確なバージョン
・複数回のテストが行われたか
・第三者による検証の有無
そのため、この比較は科学的ベンチマークというよりデモンストレーションに近いと見る専門家も多い。
議論の最大のポイントは、Tesla FSDの中国版が制限付きのバージョンである可能性だ。
報道によれば、比較に使われたのは 中国で提供されているFSD Version 13 とされる。
一方、Teslaは米国などでより新しいバージョンを開発・テストしており、地域によって機能や性能が異なる可能性がある。
地域制約の影響としては次のような要素が挙げられる。
・地図データの利用制限
・中国特有の交通行動データ
・規制による機能制限
・ソフトウェア更新のタイミング
つまり、中国市場に最適化されたXPENGのシステムと、制限されたTeslaの地域版を比較した可能性があり、それが公平性の議論につながっている。
VLA 2.0は、自動運転AIの設計そのものを変えようとする試みだ。
従来の運転支援システムは、一般的に次のような段階的処理を行う。
XPENGはVLA 2.0でこの構造を大きく簡略化し、視覚情報から直接運転操作を生成するエンドツーエンドモデルを採用したとしている。
さらに従来のマルチモーダルAIで使われる「言語的な中間表現」を排除し、視覚信号から直接アクションを生成する仕組みを導入した。
同社はこのモデルを 「物理世界の大規模AIモデル」 と呼び、現実の交通環境を理解して行動できるシステムとして位置付けている。
企業資料や業界報告によれば、VLA 2.0の開発にはかなり大規模なAIインフラが使われている。
・クラウドモデル:約 720億パラメータ
・学習データ:約 1億本の運転動画
・車載計算能力:約 2,250 TOPS
XPENGはこのデータ量を「人間の運転経験数万年分」に相当すると説明しているが、こうした換算は企業側の推計であり独立検証はされていない。
VLA 2.0は 2026年3月からOTAアップデートで提供され、P7、G7、X9などの上位グレード車両に導入された。
メディアによる試乗レビューでは、VLA 2.0はかなり高く評価されている。
北京で行われた試乗では、ある記者が約40分の都市走行で一度も介入する必要がなかったと報告している。
ただし評価は完全に一方的ではない。
InsideEVsなどのレビューでは次のような指摘もある。
・挙動は非常に滑らかで自信がある
・しかし総合的な成熟度ではTesla FSDがまだ上
・レーンレベル地図への依存がやや強い
・極端な緊急シナリオでの実力はまだ未知
そのため多くの評価は、VLA 2.0を
「急速に追い上げる強力なライバル」
と位置づけている。
XPENGの創業者でCEOの 何小鵬(He Xiaopeng) はかなり具体的な目標を公言している。
彼は2026年のAuto Chinaイベントで、
「2026年8月30日までに、中国でTesla FSDを完全に上回る」
という目標を改めて示した。
基準としているのは、米シリコンバレーでテストされている FSD V14.2 の運転体験レベルだという。
さらに同社は将来的に、VLAベースのシステムが Level 4自動運転を実現する可能性にも言及している。ただし実現時期は規制や技術検証に大きく依存するとされている。
これまで消費者向け自動運転技術の基準は長くTeslaだった。
しかしXPENGをはじめとする中国EVメーカーは
・巨大な走行データ
・高速なソフトウェア更新
・AIモデルの大規模化
といった強みを背景に急速に追い上げている。
今回の比較テスト自体は決定的な証明とは言えない。それでも一つだけ確かなことがある。
自動運転の主戦場は、もはやシリコンバレーだけではない。