この動きは単なる投資以上の意味を持ちます。欧州のフードデリバリー市場では競争が激しく、資本関係や提携を通じた「業界再編」の可能性も常に取り沙汰されています。今回の出資は、その流れの中で見る必要があります。
Uberの持ち株は一度に取得されたわけではなく、段階的に積み上げられました。
まず重要な取引が、オランダのテクノロジー投資会社Prosusからの株式購入です。Uberは
という条件で株式を取得しました。
この取引によりUberの持ち株は当時**約7%**まで増加。その後さらに株式や金融商品を取得し、最終的に
を保有する構造になりました。
公開時点の市場価格で計算すると、Uberの持ち株価値は約17億ユーロ規模と推定されています。
Uberが株式を買えた背景には、規制上の事情があります。
Prosusは欧州のフードデリバリー企業Just Eat Takeawayを買収しましたが、欧州委員会(EUの競争当局)はこの取引を承認する条件として、ProsusにDelivery Heroの持ち株を減らすことを求めました。
これはフードデリバリー市場での競争への影響を懸念した措置です。
そのためProsusは保有株を段階的に売却しており、Uberへの売却もその一環でした。さらにその後、他の投資家への売却も進み、株式市場では「大株主の売り圧力」が弱まるという見方も出ています。
Delivery Heroはドイツ上場企業のため、株式取得にはドイツの公開買収規制が適用されます。
特に重要なのは以下の2点です。
ドイツでは上場企業の議決権について、以下の比率を超えると当局と会社への報告が必要です。
3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%
ドイツの証券取得・買収法では、**議決権の30%以上を取得すると「支配権取得」**とみなされます。
この場合、取得者は
残りの株主すべてに対して公開買収(TOB)を行う義務
が発生します。
Uberの現在の構造は、19.5%+オプションという形でこの30%ラインを下回る設計になっています。オプションが直ちに議決権として扱われない限り、Uberは影響力を確保しつつ強制的な買収義務を避けることができます。
上場企業では株主が分散していることが多く、20%前後の株式でもかなりの影響力を持ちます。
例えばこの規模の株主は
を持つ可能性があります。
実際、Uberが持つ5.6%のオプションまで含めると、将来的に約25%近い経済的持分に達する可能性も指摘されています。
株式市場はこの新しい株主構成を概ねポジティブに受け止めました。
Prosusが持ち株を減らし始めたことやUberの保有拡大が明らかになると、Delivery Heroの株価は上昇。報道によると株価は
約31ユーロ前後で数%上昇
という動きを見せました。
これは
といった要因が評価されたと考えられます。
UberとDelivery Heroは、実は同じフードデリバリー市場で競争する企業でもあります。そのため今回の資本関係は複数の意味を持ちます。
物流、広告、テクノロジー、地域市場などでの協力の可能性。
フードデリバリー市場は統合が進みやすい業界であり、将来の合併や資産交換の足がかりになる可能性。
Uberは株主として情報や影響力を持ちながら、競争関係を維持するという形もあり得ます。
ただし、両社が大きく協調する場合はEUの独占禁止規制の審査を受ける可能性が高いとみられます。
UberのDelivery Heroへの出資は、単なる株式投資というより戦略的ポジション取りと見るのが自然です。
欧州のフードデリバリー市場では競争と統合の両方が進んでおり、今回の動きは将来の提携・再編・競争のいずれにもつながり得る布石といえそうです。