ただし、今回のポイントは「伸びている」ことだけではありません。より重要なのは、伸び方が均一ではないことです。Microsoftは、グローバル・ノースでの普及の伸びがグローバル・サウスのほぼ2倍だったと報告しており、豊かで接続環境の整った地域ほど先行する構図が強まっています。
ここでいう「グローバル・ノース/グローバル・サウス」は、単純な地理上の北と南ではなく、所得水準やインフラ、デジタル接続性などを含む大まかな地域・経済圏の分類です。先進国/途上国という言い方と重なる部分はありますが、完全に同じ意味ではありません。
| 指標 | 報告値 | 何を示すか |
|---|---|---|
| 世界の生成AI利用率、2025年下半期 | 約16.3% | 世界でおよそ6人に1人が生成AIツールを利用 |
| 2025年上半期から下半期への変化 | +1.2ポイント | 普及はなお速いペースで進行 |
| グローバル・ノースの利用率 | 就労年齢人口の24.7% | 接続環境の整った地域が先行 |
| グローバル・サウスの利用率 | 就労年齢人口の14.1% | 多くの地域で利用は進むが、出発点は低い |
| 南北間の利用率ギャップ | 10.6ポイント | 2025年上半期の9.8ポイントから拡大 |
このため、今回のレポートは単なる「生成AIが普及した」という話ではなく、「普及するほど、既存のデジタル格差も見えやすくなっている」という警告として読むべき内容です。
グローバル・ノース/サウスという分類とは別に、開発段階で見ても似た傾向が出ています。Microsoftレポートに関する報道では、15〜64歳の利用率について、先進国が27.5%、途上地域が15.4%だったとの比較も紹介されています。
つまり、デジタルインフラ、接続性、AIを受け入れる制度や組織の準備が整った国・地域は、単に先行しているだけでなく、より速く前へ進んでいます。この流れが続けば、生成AIは教育、仕事の生産性、公共サービスへのアクセスの格差を自動的に縮めるどころか、既存の差を広げる要因にもなり得ます。
生成AIの普及を左右するのは、アプリが公開されているかどうかだけではありません。関連報道では、インフラと言語が大きな分岐点になっており、AIの恩恵が比較的少数の国に集中していると指摘されています。また、貧しい地域や英語圏ではない地域では、限られたインターネットアクセスや英語中心のAIモデルが壁になっているとも報じられています。
生成AIはクラウドサービスとして使われることが多く、安定したインターネット接続がなければ実用性が大きく下がります。Microsoft関連のAI普及レポート要約でも、高速インターネット、信頼できる電力、端末へのアクセスがAI経済に参加するための基本条件として挙げられています。
多くの主要AIツールは、英語や学習データ・製品サポートが豊富な言語で性能を発揮しやすい傾向があります。地域の言語で自然に使えること、現地の文脈に合う回答やアプリケーションがあることは、単なる利便性ではなく普及の前提条件です。
AI普及は個人の利用だけで決まりません。学校、企業、行政機関、地域の開発者が、AIを学習支援、業務改善、公共サービス、ローカルな課題解決に結びつけられるかが重要です。グローバル・ノースでの普及の伸びがグローバル・サウスのほぼ2倍だったというMicrosoftの結果は、デジタル基盤の強さが新しい技術を吸収する速度にも影響することを示しています。
今回のレポートは、生成AIが「どこで使われているか」を見る普及データです。ある要約によれば、調査は対象期間中に生成AI製品を使った消費者の割合を普及率として測り、集計・匿名化されたMicrosoftのテレメトリデータを、OSや端末市場シェア、インターネット普及率、各国人口などの違いで補正しています。
そのため、この数字は生産性向上、経済価値、AI能力そのものを直接測ったものではありません。示しているのは、利用がどの地域に広がっているかです。長期的な影響は、人々、学校、企業、政府がその利用を学び、サービス、生産性、地域に合ったツールへ変えられるかに左右されます。
Microsoftのレポートが示すのは、デジタル格差の新しい局面です。生成AIツールは広がっている一方で、その利益は均等には行き渡っていません。
格差を縮めるには、単にAI製品を世界中で公開するだけでは不十分です。信頼できる通信環境、手の届く価格の端末、安定した電力、地域言語への対応、そして学校・企業・行政がAIを有効に使える政策環境への投資が必要になります。
要するに、生成AIの世界的普及はすでに始まっています。次の課題は「AIが広がるかどうか」ではなく、途上地域が対等に使いこなすためのインフラとローカルな支援を得られるかどうかです。