ただし、グラスベルグが丸ごと止まっているわけではない。Freeport-McMoRanは2025年11月、被害を受けていないDeep Mill Level ZoneとBig Gossanの地下鉱山で10月下旬に生産を再開し、Grasberg Block Caveについては2026年第2四半期から段階的な再開・増産に向けた修復を進めていると発表していた 。問題は、部分再開ではなく「フル生産」までの道のりが長くなったことだ。
すでに市場は大きな生産減を織り込み始めていた。Project Blueは、不可抗力宣言後の2026年産出が最大35%落ち込む可能性があるとした 。Fastmarketsも、銅と金の生産が2026年に35%低下する見通しを報じ、当時は段階的な回復によって2027年に事故前水準へ近づく可能性が示されていた
。今回、全面生産の目標が2028年初へ移ったことで、その回復期間がさらに延びた形になる
。
混乱の大きさを示す別の目安もある。Mining.comによると、Goldman Sachsはグラスベルグの混乱を理由に2025年と2026年の世界銅供給見通しを引き下げ、失われる銅鉱山供給を最大52万5,000トンと推計した 。
今回の直接的な意味は、グラスベルグが供給から完全に消えることではない。市場が期待していた回復の時期が後ろ倒しになることだ。
仮に2027年初にフル生産へ戻っていれば、主な混乱は2026年に集中すると見られた可能性がある。だが全面復帰の目標が2028年初になったことで、供給リスクは2026年だけでなく2027年にもまたがる 。
これは銅の需給バランスにとって小さくない。グラスベルグほど大きい鉱山では、供給前提が少し変わるだけで、市場が「余裕あり」と見るか「逼迫」と見るかが変わり得る。新たな復旧時期についての報道も、すでに世界の銅市場に影響している供給制約をさらに悪化させるものだと伝えている 。2027年の正常化を前提にしていた見通しは、グラスベルグの供給想定を下げるか、他鉱山からの上振れで埋め合わせる必要が出てくる。
供給要因だけを見れば、今回の延期は銅価格を支える材料になりやすい。世界有数の鉱山からの供給回復が先送りされるためだ。
ただし、これだけで価格の行方が決まるわけではない。銅価格は需要、在庫、スクラップ供給、他鉱山の増産やトラブルにも左右される。グラスベルグの遅れだけで世界的な銅不足が決まるわけではないが、少なくとも2027年回復を前提にした見通しよりも、2026〜2027年の需給が引き締まりやすくなったとは言える 。
次に注目すべきは、Grasberg Block Caveの段階的立ち上げが計画通り進むか、2028年初という全面生産目標に再変更がないか、そして2026年・2027年の鉱山供給見通しがどう修正されるかだ 。明確な改善が見えるまで、グラスベルグの復旧遅れは銅供給の弱点として残り続ける。
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