中国の産業用ロボット市場で、国産ブランドは明確な数量上の節目を超えた。MIR DATABANKの集計を引用した情報によれば、2025年の国産ブランドの出荷比率は約55%。2020年には3割未満だった比率が大きく伸びた。
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ただし、これはあらゆる用途で海外メーカーを置き換えた、という意味ではない。中国勢が先に強いのは、作業が標準化され、増設スピードとコストが重視される工程だ。一方で自動車のボディーショップや半導体関連の高難度工程では、ロボット本体だけでなく、長年にわたって検証されてきた工程ノウハウ、シミュレーション環境、保守網、停止・不良時の責任を負う体制までが問われる。
出荷台数は国産勢が主導する市場へ
Estun(エスン)は2025年、中国市場で約3万3,400台の産業用ロボットを出荷し、市場シェア約10%で全ブランド首位になったと報じられている。Inovance(イノバンス)は全体で約9.2%、SCARAロボットで約**25%**のシェアを持つとされる。
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重要なのは、国産メーカーが単なる低価格帯の供給者ではなくなっている点だ。多数の企業が競合する分散型市場で、新規需要の相当部分を国内メーカーが取り込んでいる。
もっとも、出荷シェアは「台数」の比較であり、全用途における技術力の同等性を示すものではない。定型的なピック&プレース用セルと、高スループットの自動車ボディーショップに入るロボットとでは、工程の検証、稼働率、品質保証に求められる水準がまったく異なる。
EstunとInovanceの武器は「一体型」の自動化スタック
中国の有力メーカーが持つ大きな優位は、垂直統合にある。
Estunはサーボモーター、サーボドライブ、制御装置、産業用ロボット、自動化ワークステーション、デジタル製品までを展開する。モーション制御で築いた基盤をロボットへ広げ、減速機は一部を統合しつつ、内製部品と国内調達を組み合わせる戦略を採る。
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Inovanceも、ドライブ、サーボ、コントローラー、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)、CNC、産業用ロボットを含むモーション制御の製品群を、工場自動化全体の提案へつなげている。
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導入側にとっての利点は分かりやすい。
- 輸入部品の納期に左右されにくい
- ロボット、制御装置、サーボを一体で調整しやすい
- 現地での仕様変更や立ち上げ対応が速い
- セル全体でのコストを抑えやすい
つまり、競争はロボットアーム1台の比較から、互換性のある「自動化一式」を誰が速く供給・保守できるかへ移っている。
アーム内部の部品でも国産化が進む
進展は完成ロボットの組み立てに限らない。動きの精度、剛性、長期的な挙動を左右するサーボや精密減速機でも、国内企業の存在感が増している。
2025年には、中国で組み立てられる産業用ロボット向けRV減速機で、中国メーカーの合計比率が3割を超えたとの推計がある。ただし浸透が大きいのは低・中価格帯であり、重量可搬用途では輸入減速機が依然として多い。
34 ハーモニック減速機でも、中国製は標準的な産業用途を中心に、中国組立ロボットへの搭載を拡大している。
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これは実質的な輸入代替の進展だが、性能差が一律になくなったことを意味しない。高負荷・高稼働の用途では、寿命、個体間のばらつき、負荷能力、校正の安定性、フィールドサービスが極めて重要になる。こうした能力はカタログスペックだけでなく、長期の量産実績を通じて積み上がる。
すでに国産勢が強い領域
国産メーカーは、反復性が高く、中程度の可搬質量で、迅速な導入が求められる用途で特に競争力を持つ。SCARA、小型6軸、搬送、マシンテンダリング、パレタイジング、標準的な組立セルなどが代表例だ。協働ロボット、SCARA、デルタロボット、軽可搬の6軸機でも強いとされる。
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中可搬の6軸ロボットでは、中国の上位機種の繰り返し位置決め精度が**±0.02〜±0.05mm**程度に達しているとの報告もある。
43 そのため、繰り返し精度という単一の数値だけでメーカーを評価する方法は、以前ほど有効ではない。
実際の選定では、次のようなセル全体の成果を確認する必要がある。
- 絶対精度、軌跡精度、温度変化時の挙動
- 加工・搬送荷重を受けた際の剛性
- 稼働率と保守間隔
- 障害後の校正・復旧のしやすさ
- 制御装置と周辺機器の連携
- システムインテグレーターの長期支援能力
電池・太陽光・3Cで導入が先行する理由
リチウムイオン電池、太陽光発電、3C(コンピューター、通信、家電)電子機器の製造は、国産ロボットの採用に向く条件を備える。繰り返し性の高い搬送・組立作業が多く、設備増設のペースが速い。また、古い生産セルを置き換えるより、新ラインを新たな構成で立ち上げる場面が多い。
このため、ロボット、モーション制御、画像処理、コントローラー、統合、現地サポートをまとめて提案する国内企業に機会が生まれる。Inovanceはサーボ分野の強さをロボット採用へつなげる例で、2024年の中国汎用サーボ市場で約28%のシェアを持ったと報じられている。
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導入の判断は、海外製アーム1台を国産品に替える話だけではない。国内の自動化スタックを前提に、新しいセルを設計できるかどうかが重要になっている。
高級用途で海外勢がなお強い理由
FANUC、ABB、安川電機、KUKAは、要求の厳しい自動車・半導体関連用途で重要な優位を保つ。価値はロボット本体だけではなく、確立済みの工程パッケージ、熟練したエンジニアリングチーム、グローバルな保守と部品供給、停止や品質不良のコストが大きい現場での長い実績にある。
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障壁の一つが、オフラインプログラミングだ。FANUCのROBOGUIDE、ABBのRobotStudio、KUKAのKUKA.Simでは、据え付け前にセルを仮想空間でプログラム・検証できる。到達範囲、干渉、サイクルタイム、工程ロジックを事前に確認するための環境だ。
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こうしたツールは多くの場合、各社のコントローラーと密接に結び付く。ロボットメーカーを変更することは、アームを買い替えるだけでは済まない。プログラム、治具インターフェース、安全ロジック、工程条件、仮想セルの動作まで再検証する必要が生じうる。EstunがSiemensと、オフラインプログラミングと実コントローラーに近いシミュレーション機能を共同開発してきたのは、この層の重要性を示している。
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自動車は本当の試金石
Estunがボディーショップのスポット溶接に初期導入されたことは、従来は海外大手が支配してきた領域に国産メーカーが入り始めたことを示す。
8 ただし、一部の導入実績を、完成車工場のボディーショップ全体での広範な置き換えと同一視することはできない。
この領域でメーカーが購入しているのは、精度よく動くアームだけではない。長年にわたりラインを止めず、品質不良に対して責任を持てるという確信でもある。残る課題は、国内製ロボットが動作できるかではなく、サプライヤーとインテグレーターが、検証済みで保守可能な工程性能を何年にもわたり再現できるかにある。
中国の産業用ロボットは、ロボット本体と中核部品の両面で国内供給能力を急速に高めている。Estunの出荷首位と、InovanceのSCARA・モーション制御での強さは、部品メーカーが統合自動化の競争相手へ変わったことを示す。
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当面は、大規模で標準化された工場新設需要に対し、ハード、ソフト、統合、保守をまとめて提供できる国内メーカーが有利になりそうだ。だが自動車や半導体の最上位工程で勝敗を決めるのは、価格や繰り返し精度だけではない。工程ソフトウェア、認定・検証の証拠、長期信頼性、そして生産リスクを引き受ける能力である。