これらの移転は、ETFの受益証券(シェア)の償還(レデンプション)に伴う運用上のテールエンドです。投資家がブラックロックのiSharesビットコイン・トラスト(IBIT)やイーサリアム・トラスト(ETHA)のシェアを償還する際、ファンドは現金を捻出するために原資産である暗号資産を売却する必要があります。Coinbase Primeは、その売却の執行場所としてブラックロックが利用しているカストディアン兼取引プラットフォームです。オンチェーン分析プラットフォームのOnchain LensとArkhamは、7月27日の移転について「売却目的である可能性が高い」と指摘しています。
ある市場分析は、このように述べています。「これらの移転は裁量的な売り判断ではありません。それに伴うパニックは見当違いです」。ブラックロックはあくまでパススルー(通過点)として機能しており、顧客からの償還がファンドに資産売却を強制しているに過ぎません。2.7億ドルの移転は、償還のあった日に機械的にリンクしているのであって、ブラックロック自身の市場見通しを反映したものではないのです。
ブラックロックは今年に入り、Coinbase Primeへの大口移転を繰り返しています。主な例は以下の通りです。
この移転の数日前にあたる7月24日には、スポットのビットコインおよびイーサリアムETFから約3.1億ドルの純流出が発生しており、そのうちブラックロックのIBITだけで約2.12億ドルを占めていました。また、同じ時期にIBITからは1日で2.02億ドルが引き出されたとの報告もあります。
IBITは7月2日頃まで10営業日連続の純流出を記録し、その間にブラックロックの暗号資産ETFからは1週間で12億ドル以上が流出しました。ビットコインETF全体で見ても、7月初めまで8週間連続の純流出が続いていました。
Coinbase Primeへの移転が行われるたびに、取引所での利用可能な供給量が増加します。7月27日の単独の移転額は日々のBTC/ETH取引高と比較すればそれほど大きくありませんが、累積パターン(2026年にCoinbaseに移された総額は20億ドル超)は、継続的な機関投資家による償還需要を示しており、市場心理や価格モメンタムに重しとなる可能性があります。
資金の流れは一方向ではなく、むらがあります。ブラックロックのIBITとETHAは7月中旬に強い流入週を記録しており、5営業日で約3.43億ドルの純流入を集めました。また、ETHAはイーサリアムETFの流出連続記録を断ち切り、2週連続の純流入を達成しました。これは構造的な資金離脱ではなく、資金のローテーション(回転)を示唆しています。
7月27日の2.7億ドル移転は、**標準的なETFの仕組み(ETF plumbing)**に過ぎません。Coinbase Primeは、ブラックロック自身のトレーディングではなく、顧客の償還によって引き起こされた資産売却を実行するための場を提供しているのです。市場への示唆としては、ETFを通じた暗号資産エクスポージャーへの機関投資家の需要は2026年半ばにおいて依然として不安定であり、大型の流出エピソードと回復的な流入が交互に発生し、BTCとETHの価格に断続的な売り圧力を生み出している、ということです。