国際通貨基金(IMF)が2026年10月に公表した見通しでは、ベトナムの名目1人当たりGDPは5,259ドル、インドネシアは5,153ドルと予測されています。予測が実現すれば、ベトナムが106ドル、率にしてインドネシアの予測額の約2.1%上回る計算です。ベトナムが初めてインドネシアを上回り、ASEAN(東南アジア諸国連合)で5位になる見通しです。
5
9
ただし、これは現在の米ドルで表した「経済全体の生産額を人口で割った平均値」です。家計の収入や購買力を直接比べる指標ではありません。
2026年の予測値を比較
| 2026年の予測 |
ベトナム |
インドネシア |
| 名目1人当たりGDP |
5,259ドル |
5,153ドル |
| 差 |
106ドル |
— |
ベトナムの予測額は、2025年の4,829ドルから8.9%増える見込みです。増加額にすると1人当たり約430ドルで、10年前と比べるとほぼ倍の水準になります。
7
9
もっとも、両国の差はわずかです。順位が確定したわけではなく、IMFの2026年4月時点の見通しでは、同年もインドネシアがベトナムを上回る予測でした。10月の更新で見通しが変わっています。
5
15
ASEANでは5位の見通し
10月の予測どおりになれば、ベトナムは名目1人当たりGDPでASEANの5位となり、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイに続く位置です。
5
ベトナムが公表している2030年の1人当たりGDP目標は8,500ドルです。ただし、これは目標であって予測値ではありません。また、今回の見通しと同じ条件でタイの現在の水準と単純比較できる情報は、ここで参照した数値からは確認できません。
3
5
成長見通しを支える要因
IMFが予測する2026年の実質GDP成長率は、ベトナムが8.4%、インドネシアが5.1%です。これは各国経済全体の成長率であり、ベトナムの名目1人当たりGDPが米ドル換算で8.9%増えるという予測とは別の指標です。
1
2
IMFは地域経済の見通しで、ベトナムの輸出先・品目の多様化や海外直接投資(FDI)の恩恵に言及しています。
11 また、半導体や電子機器などの分野で、中国以外の生産拠点を探すハイテクメーカーがベトナムに進出しているとの報道もあります。こうした要因は成長を支える動きとして挙げられていますが、特定の産業が今回の順位逆転を単独で引き起こしたと示すものではありません。
19
直近の経済指標も背景の一端を示します。ベトナムの2026年第3四半期のGDPは前年同期比9.95%増、9月の輸出は39.1%増でした。別の報道では、1~9月のGDP成長率は9.01%とされています。
23
30
海外投資も長期的な成長の一要素です。ベトナムのFDI残高は2024年末に3,220億ドルを超え、GDPのおよそ3分の2に相当しました。これは累積した投資残高であり、2026年に新たに流入した投資額を示すものではありません。
29
公共投資も成長を支える要素として取り上げられています。日本のアジア経済研究所の上席研究員、藤田舞氏は、政府による積極的な公共投資が成長を後押ししていると述べたと報じられています。一方、労働力の育成や技術を長期的な成長要因としてどう評価しているかについて、同氏の詳しい見解は、参照できる報道からは確認できません。
10
1人当たりGDPは「暮らし向き」そのものではない
名目1人当たりGDPは、国内で生み出された経済的な付加価値を人口で割り、ここではその値を現在の米ドルで表したものです。平均賃金や可処分所得、所得の中央値とは異なり、生み出された価値が住民、企業、投資家の間でどう分配されるかも示しません。
5
15
米ドル換算の比較では、為替レートの変化が順位に影響します。また、インフレによって名目値が上がっても、実質的な生産量が同じだけ増えたとは限りません。国ごとの物価水準も異なるため、現在のドル建ての数字だけでは、各国の人々が国内でどれほどのものを買えるかは分かりません。
したがって、IMFの予測が示すのは経済規模を人口で割った平均値です。この数字だけから、ベトナムの家計のほうがインドネシアより豊かだと結論づけることはできません。