Xiaomiは2026年8月24日、自社設計のフラッグシップ向けスマートフォンSoC「XRing O3」を発表しました。同社にとって第2世代となる自社開発スマートフォンプロセッサで、TSMCの3nm N3Pプロセスで製造されると報じられています。初搭載機は、中国で2026年9月に発売予定の折りたたみスマートフォン「Xiaomi 18 Fold」とタブレット「Xiaomi Pad 9 Pro Max」です。
20
28
33
最大の注目点は、XiaomiがXRing O3を「LPDDR6に対応する初のスマートフォンSoC」と位置付けていることです。この主張は複数の媒体で報じられていますが、現時点で公表されている性能データの多くはXiaomiによる測定値です。実際の製品を使った第三者テストの結果とは分けて見る必要があります。
28
30
XRing O3の主な仕様
- 製造プロセス: TSMC 3nm N3Pと報道
- トランジスタ数: 240億個
- ダイサイズ: 133mm²
- CPU: 10コアの全ビッグコア構成
- 最大クロック: 4.35GHz
- SLC: 16MB
- GPU: 16コアのG2-Ultra NX
- メモリー: LPDDR6対応、最大10,667Mbpsと公称
- 最大メモリー帯域幅: 113.8GB/s
- 初搭載製品: Xiaomi 18 Fold、Xiaomi Pad 9 Pro Max
240億個のトランジスタを133mm²のダイに詰め込む設計は、スマートフォン向けとして大規模な部類です。CPUはC1-Ultraを2基、C1-Premiumを4基、C1-Proを4基搭載する構成と報じられており、最大クロックはそれぞれ4.35GHz、3.68GHz、3.15GHzです。
17
18
25
一般的なスマートフォンSoCでは、高性能コアと高効率コアを組み合わせる構成が広く採用されています。一方、XRing O3は10コアすべてを高性能系のコアで構成する「全ビッグコア」設計を採用。ピーク性能を重視した設計思想がうかがえますが、発熱やバッテリー持続時間とのバランスは、実機が登場してからの確認が必要です。
ベンチマークは高水準、ただし公称値
Xiaomiは、XRing O3についてGeekbench 6.5でシングルコア3945点、マルチコア1万5000点超を記録したと説明しています。さらに、AnTuTu V11では522万点というスコアも掲げています。
18
29
30
これらが同じ条件で市販端末から再現されれば、現在のスマートフォン向けベンチマークとして最上位クラスに入る可能性があります。ただし、発表時点の数値はメーカー公称の試験結果です。冷却機構、電源設定、ソフトウェアの最適化、測定時の温度などによって結果は変わるため、Xiaomi 18 FoldやPad 9 Pro Maxの量産機で独立した比較テストが行われるまでは、参考値として受け止めるのが妥当です。
18
29
30
GPUは性能85%向上、レイトレーシングは182%向上と主張
グラフィックス処理は、16コア構成の「G2-Ultra NX」が担当します。一部の報道では「Mali-G2 Ultra NX」と表記されていますが、現時点でそのブランド名や詳細仕様が第三者によって十分に確認されているわけではありません。
Xiaomiは、前世代のXRing O1と比較して、ピーク時のグラフィックス性能が最大85%向上し、レイトレーシング性能は182%向上、グラフィックス処理時の消費電力は最大64%低減したとしています。
17
25
ただし、これらもXiaomi自身による世代間比較です。ゲームのフレームレートや長時間動作時の性能維持、端末の発熱といった実用面での評価は、実機テストを待つ必要があります。
LPDDR6対応で何が変わるのか
LPDDR6は、CPUやGPU、AI処理回路へより多くのデータを短時間で供給するための次世代モバイルメモリー規格です。Xiaomiによれば、XRing O3は最大10,667Mbpsのデータ転送速度と113.8GB/sのメモリー帯域幅に対応し、XRing O1比で48%向上しています。
28
30
帯域幅が広がれば、生成AIの推論、画像処理、高解像度ゲームなど、データの読み書きが集中する処理で有利になる可能性があります。しかし、帯域幅の数字だけで、アプリの起動速度や電池持ちが実際にどれだけ改善するかは判断できません。
メモリーバスのチャンネル数やビット幅については、報道内容にばらつきがあります。Xiaomiが完全な仕様表を公開するまでは、細かなバス構成については確定情報として扱わない方がよいでしょう。
CXMT製LPDDR6が採用される可能性
報道によると、中国のメモリーメーカーCXMT(長鑫存儲)が、XRing O3向けLPDDR6の主要パートナーになるとみられています。出荷製品で確認されれば、中国で開発された次世代モバイルメモリーがフラッグシップSoCに採用される初期事例となる可能性があります。
34
35
これはXiaomiの新SoCにとどまらず、中国のメモリー産業にとっても意味を持つ動きです。一方、CXMTはSK hynixをはじめとする既存の大手DRAMメーカーと競争する立場にあります。量産規模、歩留まり、安定供給、そして実際の端末性能については、今後検証される課題です。
34
35
Xiaomi 18 FoldとPad 9 Pro Maxは9月に中国で登場
Xiaomi 18 Foldは、XRing O3を搭載する最初のスマートフォンになる見込みです。Xiaomiは同端末の予約受付を開始したと案内しており、正式発売は9月を予定しています。
2
Xiaomi Pad 9 Pro Maxは、XRing O3を搭載する最初のタブレットとして発表されました。同社はこのモデルを、業務用途やクリエイティブ作業を意識したプロダクティビティタブレットとして位置付けています。
3
32
Reutersが報じたサプライチェーン情報では、XRing O3を搭載するXiaomi 18 Foldの初期出荷目標は、およそ20万~30万台とされています。大規模な普及モデルというより、まずは自社チップとメモリー、端末ソフトウェアの組み合わせを検証するための戦略的な初期投入と見ることができます。
35
O100とD100でスマートフォンの外へ
今回の発表は、スマートフォン向けプロセッサだけにとどまりません。Xiaomiは、AI処理と自動車向けコンピューティングを担う2つのチップも発表しました。
XRing O100
XRing O100は、XRing O3と組み合わせて同社の大規模言語モデル「MiMo」を支援する6nmのAIアクセラレーターです。スマートフォンの一般的な処理を担うSoCではなく、大量のデータを扱うAIワークロード向けに設計されています。
43
52
XRing D100
XRing D100は、インテリジェントドライビング向けの自社開発チップです。Xiaomiは検証を完了し、2027年の車両への商用搭載を計画しています。報道では20コアCPUと16コアNPUを備え、大規模AIモデルを車両側で処理する機能が示されていますが、これらは製品搭載前のXiaomi発表仕様として確認しておく必要があります。
45
53
O3、O100、D100を並行して展開することで、Xiaomiはスマートフォン、AI基盤、自動車をまたぐ共通の半導体戦略を描いています。O3は単体のスマートフォン部品ではなく、同社の「自社シリコン」構想の中核に位置付けられていると言えます。
「自社開発」でもサプライチェーン全体を内製したわけではない
XRing O3は設計をXiaomiが手がける自社開発チップですが、製造まで完全に自社で行うものではありません。Reutersによれば、チップの製造にはTSMCの3nmプロセスが使われます。また、LPDDR6についてはCXMTが供給元になると報じられています。
33
34
つまりXiaomiが得ようとしているのは、半導体サプライチェーンの即時完全内製化ではなく、チップのアーキテクチャー、端末への統合、ソフトウェア最適化を含む重要部品へのコントロールです。狙いはQualcommやMediaTekへの依存を減らすことであり、外部サプライヤーをすぐに不要にすることではありません。
33
South China Morning Postが引用したアナリストは、Xiaomiの半導体開発を中国の自社開発モバイルSoC業界の上位グループに位置付けています。ただし、継続的な量産、十分な歩留まり、長期的なソフトウェア最適化、そして市販端末での競争力を証明する必要があります。
43
現時点での評価
XRing O3は、Xiaomiの半導体戦略における本格的な前進です。TSMCの先端3nmプロセス、240億トランジスタの大規模設計、10コアの全ビッグコアCPU、積極的なGPU性能目標、そしてLPDDR6への早期対応が大きな特徴です。
一方で、性能スコアや消費電力の改善率はメーカー公称値であり、LPDDR6の詳細なバス構成やCXMT製メモリーの量産実績にも確認すべき点が残っています。XRing O3の本当の価値は、単一のベンチマークスコアではなく、Xiaomiがチップを安定して量産し、搭載端末を拡大し、スマートフォン・AI・自動車の各分野で自社設計チップを継続的な競争力へつなげられるかどうかで決まります。