形式検証自体は何十年も前から存在しますが、実際の開発で使うには非常に時間と専門知識が必要でした。
ブテリンは、AIによってこの状況が変わる可能性があると見ています。
AIコーディングツールは次のような作業を支援できます。
これにより、従来は研究レベルのプロジェクトに限られていた形式検証が、現実のEthereum開発にも使いやすくなる可能性があります。
AIの開発速度を示す例として、報道では約70万行のEthereumクライアントのプロトタイプが数週間で作られた実験も紹介されています。このプロトタイプはEthereumのロードマップ項目に沿っており、メインネットと同期することも可能でした。
ただしブテリンは、AIで得られる生産性の向上を単にスピードに使うのではなく、テストや形式検証などの安全対策にも振り向けるべきだと強調しています。
Ethereumの今後の計画には、非常に複雑でセキュリティが重要な技術が多く含まれています。こうした分野では、AI支援の形式検証が特に有効と考えられています。
Ethereumの長期ロードマップでは、ゼロ知識証明(ZK)ベースの検証システムが重要な役割を担います。ZK‑EVMは2028年頃までに主要な検証方式の一つになる可能性があるとされています。
この種の暗号回路や証明システムは非常に複雑なため、形式検証によって実装ミスのリスクを減らす価値は大きいと考えられます。
Ethereumの設計理念はセキュリティ・分散性・ユーザー主権を重視することです。
コンセンサスロジック、クライアント実装、暗号処理などを数学的に検証できれば、プロトコルが意図どおり動作する保証が強化されます。
短期的な優先事項には、ネットワークのスケーリングや実行能力の向上があります。
こうした性能重視の低レベルコードは、微妙なバグが重大な問題につながることがあるため、形式検証の対象として適しています。
Ethereumはスマートコントラクトウォレット、プライバシー機能、アカウント抽象化の拡張を計画しています。
これらは認証、トランザクション検証、暗号証明など複雑なロジックを含むため、数学的検証が安全性向上に役立つ可能性があります。
研究者たちは将来の量子コンピュータに備えた暗号技術の導入も検討しています。
暗号アルゴリズムの移行はプロトコルにとってリスクの高いタイミングであり、形式検証された実装は強力な安全保証になります。
ブテリンは、AI支援の形式検証を万能の解決策とは見ていません。
最大の制限は、形式検証が**「指定された性質」しか証明できない**点です。もし仕様そのものが間違っていれば、その問題は証明では見つかりません。
さらに実務面の課題もあります。
ブテリンは、AIで高速に生成された実装には「かなりのバグ」が含まれる可能性があるため、本番導入前には徹底したテストとセキュリティチェックが不可欠だと警告しています。
AIが進化すると、防御だけでなく攻撃側も脆弱性を見つけやすくなる可能性があります。
そのため、数十億ドル規模の資産を扱うブロックチェーンインフラでは、従来以上に強力な安全保証が求められるかもしれません。
もしAIが形式検証の難しい部分を自動化できれば、将来的には重要な暗号インフラが「テスト済み」だけでなく、数学的に安全性が証明されたソフトウェアとして構築される時代が来る可能性があります。もちろん、その証明が定義する範囲の中で、ですが。