しかし、この朗報は、システムの根幹を揺るがす「弾薬不足」という厳しい現実と同時に届いた。空軍報道官のユーリー・イフナト氏は、パトリオット、NASAMS、そしてIRIS-Tの各システム用の迎撃ミサイルが「危機的に不足している」と警告。一部の運用部隊では、発射機が「半分空」の状態にあることを明らかにしている 。つまり、新たな装備によって防空網の骨格が強化されても、ミサイルがなければ、その真価を発揮することはできないのだ。
ゼレンスキー大統領の発表には、戦争の激しさを如実に示す、身の毛もよだつような一週間の集計が伴っていた。彼の報告によると、直近の一週間だけでロシアは以下の兵器を発射している。
これらの攻撃は、住宅地やエネルギーインフラを圧倒的に標的にしている 。この一週間の集中攻撃は、2026年5月を歴史的に苛烈な月へと変えた、より大規模なエスカレーションの一部に過ぎない。その前月となる4月には、すでに民間施設を狙ったドローンとミサイルの攻撃が6722発に達し、2022年2月の全面侵攻開始以来、月間最多記録を更新していた 。
攻撃のペースはさらに加速しており、5月にはいくつかの画期的な攻撃が発生した。
ロシアの戦略は、大量の低コスト攻撃型ドローンと高価値の精密誘導兵器を組み合わせ、ウクライナの防空能力を圧倒することにある。直近の攻撃で使用された具体的な兵器を見ると、その絵図がはっきりと浮かび上がる。
こうした複合的な脅威に対抗する上で、IRIS-Tは単なる追加装備ではない。短・中距離防空システムとして、巡航ミサイルやドローン、航空機の迎撃に非常に高い効果を発揮し、短距離の機関砲ベースのシステムと、長距離のパトリオットミサイルの間にある重大な作戦上の隙間を埋める存在だ。中距離型は、最大40kmの距離、高度20kmまでの目標に対処できる 。
発射機が1基増えるごとに、都市や重要インフラの周囲に展開できる「防衛の傘」が直接的に拡大する。ゼレンスキー大統領は一貫して、これらのシステムによって「何千、何万もの命が救われてきた」と強調している 。しかし、発射機はミサイルがなければ高価なレーダーを搭載したトラックに過ぎない。将来を見据え、ウクライナは18基の新型中距離IRIS-T SLMシステムを発注しているものの、今まさに戦場で直面しているのは、配備済みシステムの弾薬不足という差し迫った危機である 。
問題は二重構造だ。第一に、ウクライナは高価で高度な西側の迎撃ミサイルの継続的な供給を確保しなければならない。第二に、ロシアの安価で大量のシャヘド系ドローンに対し、経済的に太刀打ちできるよう、国産の低コスト迎撃ドローンやミサイルの生産拡大を急いでいる。ミハイロ・フェドロフ国防相によれば、ウクライナが拡充中の短距離防空ネットワークは、攻撃の激しさが35%増す中でも、迎撃ドローンによる撃墜率を劇的に向上させ、その割合を4ヶ月で倍増させたという 。
ドイツによる新たなIRIS-T発射機の供与は、かけがえのない人命救助につながる重要な一歩だ。しかし、キーウからのメッセージは紛れもなく明確である。ハードウェアは届きつつあるが、「空を守る盾」を完全に機能させるためには、その盾を支えるミサイルの大規模かつ継続的な注入なしには不可能なのだ。