OpenSharingは、この基盤をさらに拡張し、データだけでなく、AIモデルやエージェントスキルといった、より広範な「AI資産」全般を扱えるようにした、いわば「次世代型」のプロトコルです。すでにDeltaエコシステムに投資している多くの企業にとって、自然なアップグレードパスと言えるでしょう。
OpenSharingは、従来のDelta Sharingの仕様を超え、いくつかの重要な機能を新たに追加しています。
Apache Iceberg対応で相互運用性を向上
新たにApache IcebergのIRCクライアントをサポート。これにより、データレイクの標準としてApache Icebergを採用している組織が、シームレスに共有ワークフローへ参加できるようになり、クロスプラットフォーム連携が大幅に強化されます 。
オンプレミス環境への配慮
MinIOやQumuloといったオンプレミスストレージとの初期統合も発表されました。機密性の高いデータを自社のインフラ内に置きつつ、安全に共有エコシステムへ参加できる道が開けます。Linux Foundationは、今後さらに多くのストレージパートナーが参加する見込みだとしています 。
統一交換フレームワーク
AIモデル、データ、エージェントスキルを別々の課題として捉えるのではなく、これら3つをまとめて扱える単一フレームワークを提供することで、統合の複雑さを軽減します 。
本プロジェクトには、業界を代表する多彩な企業・組織が名を連ねています。支持を表明しているのは、旅行ITの世界的リーダーであるAmadeus、コラボレーションツールの巨人Atlassian、金融市場インフラのLSEG、ERPの雄SAP、決済プラットフォームのStripe、そしてAI最前線のOpenAIなどです 。
老舗のエンタープライズソフトウェア企業から金融、先端AIラボまでが揃うこの陣容は、OpenSharingが業種横断的な本物のニーズに応えている証左と言えるでしょう。
OpenSharingは、現在 opensharing.io で公開され、Linux Foundationの傘下でガバナンスが運営されています 。この中立的なガバナンス構造は、競合他社同士の信頼を醸成し、プロトコルが特定の一企業ではなく、コミュニティ全体の利益のために進化していくために極めて重要です。
OpenSharingが登場したのは、AI業界がエージェント通信プロトコルからモデルライセンスに至るまで、多層的な「断片化」に悩まされているまさにその時です。Linux Foundationは、この問題に対してすでに複数の正面から取り組んでいます。例えば、AnthropicのModel Context Protocol(MCP)のようなプロジェクトに中立的な場を提供するAgentic AI Foundation(AAIF)や、エージェント間通信のためのAgent2Agent(A2A)プロトコルといった活動です。
OpenSharingは、こうしたエージェントの「会話」や「文脈理解」の標準化努力を補完し、AIワークロードを支える「データと資産」の層に焦点を当てた存在です。
また、OpenSharingがオンプレミスストレージとの連携を当初から重視している点は、非常に示唆的です。金融やヘルスケアなど、厳しいデータ主権要件を持つ規制産業の多くは、AIで連携しながらも、機密データを自社の境界内に留める必要があるからです。プロジェクトはMinIOやQumuloに加えて、さらなるパートナー拡大を示唆しており、こうした分野での幅広い採用を見据えていることがうかがえます。
AIの「共通言語」を目指す動きは、もはや理想論ではありません。OpenSharingは、それを現実のものとするための、具体的なエンジンになりつつあります。