性格には遺伝的な要素があります。しかし、遺伝子によって性格があらかじめ決まるわけではありません。ビッグファイブを対象とした過去最大のゲノムワイド関連解析(GWAS)では、研究チームが46コホート、最大114万人分のデータを統合し、性格と関連するDNA変異を1,260件特定しました。重要なのは「DNAで性格を判定できるようになった」という話ではなく、関連する変異が非常に多く、各変異の影響はごく小さく、合計しても質問紙で測った性格の違いの一部しか説明しない、という点です。
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研究で分かったこと
研究対象は、心理学で広く用いられる「ビッグファイブ」です。具体的には、外向性、協調性、誠実性、神経症傾向、経験への開放性の5特性を指します。解析では、これらの特性の一つ以上と関連する代表的な遺伝的変異が1,260件見つかり、そのうち824件はこれまで報告されていなかった関連でした。
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ただし、これは「性格を支配する遺伝子が1,260個見つかった」という意味ではありません。性格の遺伝的構造は多遺伝子性です。つまり、多数のありふれたDNAの違いが、集団全体で見ればわずかな平均的差に関係するということです。性格ゲノミクスに関するレビューでも、遺伝的影響は膨大な数の変異に分散し、個々の影響は極めて小さいとされています。
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一般的なDNA変異は、性格の違いをどこまで説明したのか
今回の研究では、一般的な遺伝的変異が各性格特性の測定値の個人差を説明する割合は、約**4.8%~9.3%**でした。質問紙の測定誤差を考慮した場合の推定値は、**9.3%~13.3%**です。
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これは集団の傾向を理解するうえで意味のある数値です。しかし、説明されない部分が大半であることも同時に示しています。多遺伝子指数(多数の変異の小さな効果を合算した指標)は、集団内の統計的な傾向をわずかに捉えられても、ある特定の人が外向的か、几帳面か、不安を感じやすいか、新しい経験に開かれているかを信頼性高く判定する道具ではありません。
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家族内解析が重要な理由
GWASでは、祖先集団の違い、家庭環境、親の特性との相関など、遺伝子と一緒に受け継がれたり関連したりする要因が結果をゆがめることがあります。そこで研究チームは、最大50,725人について、家族内で比較する解析も行いました。
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きょうだいや双生児のペアを比較する手法では、家庭環境の多くを共有する人同士が、親からランダムに受け取った異なるDNAの組み合わせを持つことを利用します。家族内でも関連が確認されれば、共有された養育環境や大まかな集団構造だけでは説明しにくくなります。
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今回、性格に関する遺伝的効果の推定は、集団全体を対象にした解析と家族内解析でおおむね似ていました。これは、受け継いだDNAの違いが性格の個人差に寄与するという結論への信頼性を高める結果です。ただし、すべての遺伝的相関を因果関係として証明するものではありません。家族内解析は重要な交絡要因を減らしますが、環境の影響をなくすわけでも、性格関連のDNAが後年の人生の結果を直接引き起こすことを示すわけでもありません。
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健康、教育、仕事などとの関連は「運命」ではない
研究では、性格に関連する遺伝的傾向と、健康、行動、精神医学的特性、社会的・経済的な結果との間に広範な遺伝的相関が報告されました。これは、性格特性が幸福感や人生の経路と結び付く理由を研究する手がかりになります。
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ただし、健康、教育、職業上のパターン、寿命、居住地の移動、あるいは新型コロナウイルス感染症の流行初期における感染しやすさとの関連は、「性格に関わるDNAがそれらを直接引き起こす」ことを意味しません。遺伝的相関には、生物学的な重なりだけでなく、社会的条件、家族の影響、似た特性を持つ人同士の結婚・交際、行動など、多様な経路が反映され得ます。
たとえば、先行研究には、ある条件下で外向性とCOVID-19への感染しやすさの間に正の遺伝的相関を報告したものがありますが、その結果は条件間で一貫していませんでした。
25 また、教育達成と結び付いた多遺伝子スコアと親の寿命の関連を示す研究もありますが、これは関連の報告であり、性格に関するDNAから寿命への直接的な因果経路を示したものではありません。
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とりわけ、進学、仕事、収入、住む場所のように社会的な条件と強く結び付く結果を解釈するときには注意が必要です。こうした結果は、遺伝的な違いだけでなく、制度、機会、人間関係、選択、生活環境によって形づくられます。
この研究が変えたこと、変えないこと
この研究は、性格の遺伝的な地図を大きく前進させました。大規模なデータと家族内での検証により、一般的な遺伝的変異がビッグファイブの個人差に実在するものの、広く分散した形で寄与するという結論は、より確かなものになりました。
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一方で、この結果はDNAプロファイルから性格、将来の健康、学歴、職業上の成功、移住先、寿命を読み取れることを正当化しません。効果は小さく、性格の測定には限界があり、性格は生物学、経験、文化、人間関係、置かれた状況の継続的な相互作用のなかで形づくられます。
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実用的な結論は明快です。遺伝学は集団に見られる大まかなパターンを説明する助けにはなります。しかし、特定の一人がどのような人なのか、これからどのようになるのかを、DNAだけから信頼性高く語ることはできません。