JWSTの決め手となった機器:NSF NOIRLabのHyewon Suh氏率いる研究チームは、JWSTの近赤外線分光器「NIRSpec」 を使用した。NIRSpecは、4,900光年離れた2つのコンパクトな発光源を明らかにし、それぞれが高速で渦巻くガスのスペクトル特性を示した。これは、活発に物質を食べている超大質量ブラックホール(活動銀河核、AGN)の明白な証拠である
。共同研究者のRoberto Decarli氏は次のように述べている。「この発見のステップは、JWST、特にそのNIRSpec装置の卓越した撮像・分光能力のおかげでのみ可能でした。地上からの同様の観測は、これらの波長における大気の透過率が低いため、極めて困難だったでしょう。」
アルマ望遠鏡(ALMA)が追加した情報:アルマ望遠鏡は、各AGNに関連する大量の冷たいガスのプール を検出した。Decarli氏は、これは「2つのAGNが合体寸前の2つの銀河の中心に存在することを示している」と指摘する。各ブラックホールの周囲に冷たいガスに富んだ銀河環境が存在することが、特殊な形成シナリオを排除し、真のガス豊富な銀河合体であることを確認する決め手となった
。この研究は『Nature Astronomy』に掲載が受理されている(プレプリントarXiv:2607.19491)
。
マックス・プランク地球外物理学研究所のHannah Übler氏が率いる別の研究チームは、同時に、銀河J0148-4214の中に、活発に物質を降着させる3つの超大質量ブラックホール を特定した。この銀河は地球から 125億光年以上 彼方(赤方偏移z=5.0167)にあり、ビッグバンから約12億年後の姿に対応する
。
3つの配置:うち2つのブラックホールは銀河の中心付近に非常に近接して存在し、投影距離でわずか 620光年 しか離れておらず、合体寸前であることを示唆している。3つ目のブラックホールは銀河の外縁部、中心から約5,500光年離れた場所にある。質量は太陽の数百万倍から約8000万倍の範囲に及ぶ
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検出方法:研究チームは JWSTのNIRSpecを積分視野分光(IFS)モード(NIRSpec-IFS) で使用し、空間分解された分光データからブラックホールのスペクトル的特徴を検出した。各ブラックホールは、禁制線を伴わない幅広い水素アルファ輝線(半値全幅430~2,920 km/s) によって特定された。これは、巨大ブラックホールの周りを周回するガスの明確な兆候である。
これは 遠方宇宙において、1つの銀河に3つの活動的超大質量ブラックホールが存在する最初の証拠 である。Übler氏は次のように述べている。「これは、初期宇宙のプロセスが巨大ブラックホールを効率的に集結させ、将来の重力波観測所で検出が期待される大規模なブラックホール合体の舞台を整えていたことを示唆しています。」
この研究は、BlackTHUNDERプロジェクトの一環として『Astronomy & Astrophysics』に掲載された
。
この2つの結果は、宇宙史の重要な段階を理解する新たな窓を開く。ビッグバンから15億年も経たないうちに、超大質量ブラックホールが存在しただけでなく、ガスに富んだ環境で活発に合体・成長していたことを示している。短い波長の光を透過しない塵を、赤外線で見通すJWSTの能力こそが、これらの隠されたブラックホールシステムを明らかにする鍵となった。LID-1166の研究が指摘するように、ハッブルなどの従来の望遠鏡は、ブラックホールを育てるまさにそのガスと塵に覆われたこれらの天体に対しては「盲目」だったのである。