Glassnodeは、ビットコインが量子攻撃にさらされる可能性を次のシンプルな基準で判断しています。
公開鍵がオンチェーンで既に見えているかどうか。
もし公開鍵が公開されている場合、将来の量子コンピュータがその公開鍵から秘密鍵を計算し、資金を移動できる可能性が理論上生まれます。
この方法で分析した結果は次の通りです。
Glassnodeはこのリスクを大きく**「構造的露出」と「運用上の露出」**の2種類に分類しています。
構造的露出とは、ビットコインのスクリプト形式そのものが公開鍵を露出させるタイプのことです。ユーザーがアドレスを再利用しなくても、設計上公開鍵が見えるため、将来的な量子攻撃の前提条件を満たしてしまいます。
代表的な例は以下です。
こうした仕組みにより、約192万BTC(供給の約10%)が構造的に公開鍵を露出した状態にあると分析されています。
構造的露出の大部分は、ビットコイン誕生直後の**サトシ時代(2009〜2010年頃)**のトランザクションに由来します。
当時は多くの取引がP2PK形式だったため、公開鍵が永久的にブロックチェーン上に残っています。
推計では、サトシ・ナカモトに関連するとされる約110万BTCもこのタイプのアドレスに存在すると考えられています。
もし将来量子コンピュータが暗号を破れるようになれば、こうしたコインは設計上ずっと露出した状態のままになります。
604万BTCのうち大部分は、設計ではなく利用方法(運用)によって公開鍵が露出したケースです。
主な原因は2つあります。
ビットコインでは、コインを一度使うとそのアドレスの公開鍵がネットワーク上に公開されます。
もし同じアドレスを再利用すると、残っている資金は公開鍵が既に知られている状態になります。
これは将来、量子コンピュータが秘密鍵を導出できる場合の潜在的リスクになります。
大手暗号資産取引所は大量の資金を管理しており、ホットウォレットや内部トランザクションで資金を頻繁に移動させます。
こうした運用により、公開鍵がオンチェーンで露出するケースが増える可能性があります。
Glassnodeの分析では、Coinbase、Binance、Bitfinexなどの取引所関連アドレスも検討対象に含まれています。ただし公開されている要約データでは、各取引所ごとの具体的な露出BTC量は示されていません。
ビットコインはトランザクション署名に**楕円曲線暗号(ECDSA)**を使っています。
理論上、量子コンピュータがShorのアルゴリズムを実行できる規模に到達すれば、公開鍵から秘密鍵を導出できる可能性があります。
その場合、公開鍵が既に見えているアドレスの資金は盗まれるリスクが生まれます。
ただし重要なのは、現在そのような能力を持つ量子コンピュータは存在しないという点です。
こうした将来リスクに備え、ビットコイン開発者の間ではいくつかの対策案が議論されています。
その一つがBIP‑360です。
この提案はソフトフォークによって新しい出力形式を導入し、量子耐性を持つTaproot互換スクリプトを可能にすることを目指しています。
他にも、
といった議論もありますが、所有権やビットコインのガバナンスに関わるためコミュニティ内でも意見が分かれています。
Glassnodeの研究が示しているのは、ビットコインの量子リスクは「コインの量」よりも公開鍵が見えているかどうかに依存するという点です。
現実の量子攻撃はまだ存在しません。しかし研究は、量子耐性を備えたビットコインへのアップグレードが将来重要になる可能性を示しています。