つまり、Appleの勝利は「品目限定」です。EUIPOが、葉や欠けた部分のある丸い果物マークをすべて排除したわけではありません。報道では、出願人は裁定後2カ月以内にEUIPOへ不服申立てができるとも伝えられています 。
問題のロゴは、丸い柑橘類のような果実で、上部に左へ傾いた緑の葉、右側に欠けた部分があり、下半分はキーボードのキーのような区画、上半分は太陽光のような放射状デザインとされています 。MacRumorsは、社名の一部が柑橘類を意味すると紹介しており、それが果物モチーフの理由とみられるとも報じています 。
出願対象には、キーボードなどのコンピューター関連製品に加え、太陽光パネルも含まれていました 。この商品範囲の違いが、最終的に判断を分ける重要な要素になりました。
Appleは、果物の輪郭、葉、欠けた部分といった要素が、自社の有名な「かじられたリンゴ」ロゴを連想させ、Appleブランドとの関連を生む可能性があると主張しました 。また、9to5MacやMacTechの報道では、EUIPOが注目したのは、この柑橘形ロゴがEUにおけるAppleの評判から不当に利益を得る恐れだったとされています 。
ここで大事なのは、単に「似ているかどうか」だけの話ではない点です。商標では、ロゴの見た目に加え、使われる商品、消費者が受ける印象、既存ブランドの知名度との関係が問題になります。
一方で、EUIPOはAppleの視覚的類似の主張を全面的に採用したわけではありません。報道によると、審査側はこのロゴの本体がほぼ完全な円形である一方、Appleロゴは完全な円形ではないと指摘し、消費者にはAppleのロゴよりもオレンジなどの丸い果物として認識されやすいと見たとされます 。
したがって、今回の判断は「柑橘ロゴを見た人が必ずAppleと誤認する」という内容ではありません。むしろEUIPOの論点はその後、商品分野とAppleの評判、そして消費者が両者を心理的に結び付ける可能性へ移っています 。
それでも、キーボードやコンピューター関連製品ではAppleの異議が通りました。理由として報じられているのは、Appleが電子分野で高い評判を持ち、キーボードがコンピューターと密接に結び付く周辺機器であることです。そうした商品に欠けた果物マークが載ると、消費者がAppleとの心理的なつながりを持ち、Appleのブランド評価にただ乗りするリスクがあると判断されたとされています 。
ロゴ下半分にキーボード風の区画を入れたことは、商品の特徴を示す工夫である一方、商標をAppleの事業領域に近い文脈へ引き寄せる要素にもなりました。今回の判断では、その文脈が不利に働いたと読めます 。
太陽光パネルについては、同じロゴでも拒絶されませんでした。EUIPOは太陽光パネル部分の出願を継続可能とし、拒絶をコンピューター関連商品に限ったと報じられています 。
これは、Appleの知名度が高くても、あらゆる業界であらゆる果物モチーフを止められるわけではないことを示しています。少なくとも今回の出願では、コンピューター関連製品と太陽光パネルで、商標リスクの見方が分かれました 。
今回の合図は「果物のロゴは危ない」という単純な話ではありません。より正確には、次のような教訓です。
結論として、AppleはEUIPOで確かに一部勝訴しました。ただし、その射程は明確です。今回の判断は「欠けた丸い果物はすべてAppleのもの」という話ではなく、「キーボードなどAppleの評判と近い商品分野では、消費者の連想と評判へのただ乗りリスクが問題になる」という判断だったと言えます 。